2014 Fiscal Year Research-status Report
強制収容所で過ごし、解放後社会主義に傾倒した日系アメリカ作家、および芸術家の軌跡
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26370334
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
牧野 理英 日本大学, 商学部, 准教授 (10459852)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日系強制収容所 / 日系アメリカ / 第二次世界大戦 / カレン・テイ・ヤマシタ / 1970年代 / ハートマウンテン収容所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次大戦中、米ワイオミング州の日系強制収容所で青少年期を過ごし、解放後に社会主義に傾倒していった日系アメリカ人の作家、および芸術家の軌跡をたどることで、彼らの歴史的経験がどのように作品に投射されたかを探る。本研究は3段階に分けられる。1)収容所内に残された文献を閲覧、解読し、体験者の親族とのインタビューによる取材を行い、2)収容所内および解放後に作成された芸術作品、文学作品から社会主義的傾向を分析する。3)そして収容所の体験と社会主義的発想との連関(特に70年代日本との関係)を見つけ、この歴史的トラウマがどのように芸術的表現へと昇華していったかを日本人研究者の立場から分析・提示する。 26年6月のアメリカ学会で、日系アメリカ作家カレン・ヤマシタの70年代カリフォルニアを舞台にした小説、I Hotelの歴史的背景に関する分析を沖縄の琉球大学で発表した。カリフォルニア州における資料収集、およびインタビューに基づく海外出張に関しては、平成26年の夏休み(7月から9月)を全般的に使った。日本大学本部の海外研究員短期B(一か月枠)の助成金を受けていたため、その費用もここにあてた。収容所に関する文献をロサンゼルスの日系博物館、ヒラサキナショナルリソースセンターで収集。アメリカ学会の全国紙『アメリカ研究』に英語論文“Absent Presence as a Non-Protest Narrative: Internment, Interethnicity, and Christianity in Hisaye Yamamoto’s ‘The Eskimo Connection.’を提出、6月に掲載が確定している。慶応義塾大学の巽孝之教授、元日本大学のロバート・リー教授編集のもと、ヤマシタの作品に関する英語の研究書、Karen Tei Yamashita: Fictions of Magic and Memoryが27年に出版予定で、その原稿はすでに完成している
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究が予想以上の成果を上げているのは以下の事実からである。まず、本科研費の他、本務校日大商学部の海外研究短期B(本部枠一か月)を取得したため、夏休みをすべて使って、資料収集、書籍購入、渡米、そして論文作成費に研究費、科研費を投入することができた。金額以外においても夏休みというまとまった貴重な時間を使い、集中して研究をカリフォルニア大学UCLA図書館、ワシントンDCの国立国会図書館等で過ごすことができ、きわめて質の高い研究ができたのではないかと自負している。特にDCではアラスカ州における第二次大戦中の日系収容所とアメリカ先住民保留地との比較を分析した貴重な文献を見つけ、これは予想外の収穫であった。結果的に研究計画は予想以上に順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
英語論文をハワイ大出版で28年に出版予定、内容はI Hotelの作品論となる。27年7月から9月の夏休みはワイオミング州ハートマウンテン収容所で、元収容者アーサー・イシゴに関する資料を集めることに主眼をおく。これは水彩画家で、Lone Heart Mountain といった手記や“Days of Waiting” といったドキュメンタリー映画などで有名になっているエステルに比べ、夫アーサーに関する資料の少なさが目立つためである。ワイオミング州、レイルトンにあるハートマウンテン・インタープレティヴセンター(旧ハートマウンテン収容所)へ赴くがその理由は、主にこのアーサーの情報を得るという目的のためである。センター所長のBrian Liesinger 氏と面会し、古文書館を利用させていただく了承を得ている。ここへ赴く理由は、現存する文書が貸出不可となっており、その大半はマイクロフィッシュであるため。またアーサーの収容所解放後の活動に関しては、作家のヤマシタやイシゴ夫妻を知る人物らにインタビューをする。なおアメリカでの日系作家、芸術家、研究者(ロサンゼルス)との面会が26年(7-9月)となっているが、これが全員計画通りにいかない場合は、27年の夏休み(7―9月)のカリフォルニア州の人々との面会に集中させることにする。12月に今回の調査をまとめたものを英文にし、アメリカの学会誌Transnational Studies へ投稿する。
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Research Products
(6 results)