2015 Fiscal Year Research-status Report
強制収容所で過ごし、解放後社会主義に傾倒した日系アメリカ作家、および芸術家の軌跡
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26370334
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
牧野 理英 日本大学, 商学部, 准教授 (10459852)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日系強制収容所 / 日系アメリカ / 第二次世界大戦 / カレン・テイ・ヤマシタ / 1970年代 / ハート・マウンテン収容所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次大戦中、日系強制収容所で青少年期を過ごし、解放後に社会主義に傾倒していった日系アメリカ人の作家、および芸術家の軌跡をたどることで、彼らの歴史的経験がどのように作品に投射されたかを探るというものである。26年度はハートマウンテン収容所のエステル、アーサー・イシゴ夫妻の資料収集に費やしたが、27年度では日系アメリカ作家、カレン・テイ・ヤマシタの作品分析に焦点を絞った。 前年度のカリフォルニア州における資料収集、およびインタビューに基づく海外出張の結果、27年6月25日から29日開催の国際メルヴィル学会において、カレン・テイ・ヤマシタの基調講演を日本アメリカ文学会、慶応大学と共催ですることができた。学会はかつてない国際色にあふれたものになり、大変好評を得た。ヤマシタの講演と牧野のパネル(東京外語大学今福竜太教授、明治大学菅啓次郎教授)のコメントは英語ではメルヴィルの米機関紙、リヴァイアサンに掲載された。その後牧野はヤマシタ基調講演と自身のコメントを日本語訳し、それは三田文学に掲載することができた。 慶応義塾大学の巽孝之教授編集のもと、ヤマシタの作品全般に関するアジア研究者ベースの英語の研究書が今後出版予定であり、プロスぺクタスはすでに提出済みである。また28年1月に開催されるMLAでは、ヤマシタの作品をどのように大学で教えるのかという教育法に関するパネルがあり(来年のテーマはBoundary Conditions)牧野のプロスぺクタスは27年1月に受理され、28年1月にフィラデルフィアで発表することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が順調に進展している理由は、メルヴィルの国際学会で発表したことが大きな要因になっている。日本メルヴィル協会、日本アメリカ文学会との共催であるカレン・テイ・ヤマシタの基調講演の成功によって、牧野はさまざまな学会からの発表を依頼された。また各々の学会における発表原稿も論文として出版することになった(エコクリティシズム研究会・黒人研究の会・アジア系アメリカ文学研究会)。またアメリカからはヤマシタの作品をどのように教えるのかという教育法に基づいたパネルセッションを来年度2017年1月にMLAに発表する機会があたえられた。これは予期せぬ日本研究者発信のアメリカ、および世界に対する日本人研究者としての新しい視点の提示になることはいうまでもない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針に関しては、なるべく早くヤマシタに関する理論書(共著)を出版できる体制を作り上げていくことを第一目標に考える。また研究書と平行してヤマシタの作品の教育法を理論化するように要請されているため、日系アメリカ文学をどのように日本の大学で教えるのかという方法論に関する共著を、ハワイ大のRuth Hsu准教授、ワシントン州立大学のPamela Thoma 准教授と共に28年度出版計画予定である。
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Research Products
(4 results)