2016 Fiscal Year Annual Research Report
Invading the Bounderies of Highbrow and Lowbrow Literature. The Actuality of Robert Walsers and Friedrich Glausers Writing Strategies.
Project/Area Number |
26370389
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
Emde Franz 山口大学, 人文学部, 教授 (00209157)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高尚文学 / 通俗文学 / 比較文学 / 翻訳 / 批評・評論 / 間テキスト性 / 間メディア性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、スイスの作家ローベルト・ヴァルザー及びフリードリヒ・グラウザーの作品を出発点として、近現代ドイツ語文学における作品評価の変容、そして規範価値の形成プロセスを多元的に考察した。期間内に実施した国際シンポジウム(山口大学、2015年)や国際ワークショップ(ウィーン大学、2016年)で行われた研究発表を通じて研究課題を学際的視点から議論を深めた。具体的には、文学ジャンルの変遷、メディア間翻案、文化間翻訳といった観点から、学際的考察を行った。 現在では高く評価されているヴァルザーとグラウザーの作品も、本研究課題の観点から見た場合、「高尚/通俗の境界への侵犯」を意識的に企てた介入と特徴づけることができる。これらの作家個人の語りを、同時代における文学史記述や文芸評論での規範形成との連関において分析することによって、文学における創作行為と価値評価行為との相互作用について、範例的な洞察ができた。 シンポジウム等では、さらに研究対象を拡大し、文学と視覚芸術のメディア間翻訳に関しての研究を行い、中世文学から現代グラフィックノベルに至るまで ―時代に応じて表現手段は変化しつつも― 文書と図像の相互作用が、高尚・通俗文学の規範を越えるための重要な契機であり続けてきたことを明らかにした。 本研究計画の重要な目的の一つは、高尚文学・通俗文学に関して学際的・国際的なネットワーク作りをスタートさせることであった。その結果、限られた期間や予算の範囲ではあったが、欧文言語による複数の論文集の出版により研究成果を国際的に、または公開講演や研究発表を通じて広く社会的に研究内容を周知することができた。本プロジェクトのメンバーは国内外における国際規模の研究会や発表会に積極的に参加することによって、今後のさらなる研究の展開に向けて、経験を蓄積するとともに国外の連携研究者との交流も深めることができた。
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Remarks |
開催したワークショップは、国際比較文学会大会の一環として実施され、5カ国の計12名による研究発表が行われた。成果は大会のProceedingsに発表することになる。
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