2015 Fiscal Year Research-status Report
構文の多義性に基づく失語症者の言語訓練・構文検査モデルの開発
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26370455
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
村尾 治彦 熊本県立大学, 文学部, 教授 (50263992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 裕一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (70638436)
小薗 真知子 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (80128272)
宮本 恵美 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (80623511)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 失語症 / 多義ネットワーク / 助詞 / 評価法 / 訓練法 |
Outline of Annual Research Achievements |
失語症者に対する従来の構文検査や言語訓練においては、構文の長さや構造の複雑さに基づいて実施されてきたが、本研究では、従来のものとは異なる、語や文が持つ複数の関連した用法全体を1つの語、文として見なす立場から、構文の多義構造に着目した言語訓練・構文検査モデルを開発している。 本年度は、格助詞ガ、ヲ、ニ、デが生起する各構文パターンの多義的ネットワークモデルを元に、失語症者の格助詞の理解度評価法および訓練法を検討し1つのモデルを作成した。また、評価・訓練に使う助詞穴埋め課題(試案)を作成した。既存の評価法では、一つの助詞の複数の用法の内、プロトタイプ的な用法など一部のみが刺激文として提示されており、当該の助詞が全体として理解できるのかが判定できない。訓練法においても一部の用法のみが訓練課題に用いられていたり、プロトタイプ的用法と周辺的用法が同時期に訓練に用いられている。 今回新たに以下のような評価・訓練モデルを提案した。評価法では、例えば、ヲ格のプロトタイプである対象用法を用いた刺激文の内容を表す状況画を提示し、その内容に対応する正しい助詞(ヲ)を用いた文を選択させる課題を実施。同様の課題をプロトタイプからより周辺的用法へ順次シフトし、どの用法まで理解できるのかを判断する。訓練法においては、評価の結果を踏まえ、理解ができていない用法から順次それより周辺的用法へ訓練を移行していき、各用法の活性化と用法間のネットワークを強化していく。訓練課題の内容は、評価法で用いた状況画と同時にそれを抽象化したイメージ図式を用い、文字カードを使って正しい文を作成させたり、助詞の部分を空欄にした穴埋め問題をさせるといったものである。また、音読の実施によって理解の定着をさせることも含まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定では、27年度中に訓練課題を作成し、失語症者の訓練を実施するはずであったが、訓練モデルと評価モデルの作成に時間がかかったことが要因の一つである。これは、評価課題、訓練課題に使用する刺激文の妥当性や以前に作成したネットワークモデルのカテゴリー構造の見直しの必要性を検討する必要がでたためである。また、各助詞内の用法間のプロトタイプと周辺用法に沿った評価・訓練の順番だけでなく、ガ→ヲ→ニ→デという異なる助詞間の階層性を反映した評価・訓練手順を再構築する必要性を検討するためである。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、27年度に作成した評価・訓練モデルに異なる助詞間の階層性も反映した助詞穴埋め課題・訓練課題を作成し、モデルの修正を行う。評価・訓練においてより効果を上げるモデルを構築するためには、助詞間の階層性も考慮したモデルが望ましいが、それをどのように今年度作成したモデルに組み込むかが課題となる。その後失語症者に対して評価を実施し、調査開始時点での助詞の理解度を測る。次に、従来のドリルを元にした訓練群において言語訓練を実施。同時に、ネットワークモデルに基づく訓練群には、修正した訓練課題を実施する。随時データを収集しながら、両者の比較検討を行い、訓練課題の検証を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、研究メンバーの多くが本務校の行事と参加予定であった学会日程が重なり、旅費を使用することができなかったのが大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は各メンバーの学会参加費や、評価・訓練モデルの検証のために助詞の専門家や失語症学の専門家との意見交換を行うための旅費、謝金および、必要な文献の追加購入、消耗品等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)