2014 Fiscal Year Research-status Report
JSL児童生徒に配慮した教科指導のための教員支援ーモデル構築に向けた調査研究
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26370593
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
菅原 雅枝 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (80594077)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本語を母語としない児童生徒教育 / 教科指導 / 在籍学級 / パートナーシップティーチング |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の日本語を母語としない児童生徒に対する教育では、日本語母語話者児童生徒と共に学ぶ在籍学級での教科学習をどのように支援するかが大きな課題となっている。しかしながら、現状では外国人児童生徒の支援は「日本語学級担当者」が中心となっており、一般の教員にはそうした情報が十分に伝わっていない。本研究は海外の事例を調査し、教科指導を担当する教員による支援体制を整えるためのモデル開発を目的とするものである。 研究初年度である平成26年度は、まず文化的に多様な子どもたちを指導する教員について研究を進め、さらにそれを研修という形で実施するオーストラリアの状況を調査した。早くから多文化教育を実施するオーストラリアにおいても、教員間の意識の差は大きく、継続的な教員研修が必要であることが示された。教授言語を母語とする児童生徒と非母語話者の児童生徒が在籍する学級での教科指導の方法については、イギリスで実施されている教科担当とEAL(英語を母語としない子どもたちへの教育)担当者の連携による授業方法を調査した。日本で一般に実施されているティームティーチングも複数指導者が教室内で指導する点で共通しているが、パートナーシップティーチングは教科とEAL教育ということなる専門性を持つ教員が相互にその力量を高めることがその目的として明確に位置づけられていること、そのために学校または自治体による組織的な実施が求められている点が大きく異なっている。一方で、この2点が実施上の大きなハードルともなっていることが実践者、研究者双方へのインタビューから明らかになった。 海外調査の結果を、国内の外国人集住地域の教育委員会指導主事に示し、意見を聴取した。パートナーシップティーチングの重要性、有用性は十分認められるものの、教育現場への導入のためにはより具体的な「授業準備」「教室活動」の姿を提示する必要があるとの意見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーストラリアの調査では学校現場の状況に詳しい研究者から情報提供を受ける予定であったが先方の都合により果たせなかった。 国内教育委員会への質問紙による調査については、H26年度が「特別の教育課程による日本語指導」導入初年度であり、それに伴って研修を含めた体制に様々な変更が想定されるため、当該年度内の実施を見送った。しかし、国内の外国人児童生徒教育研修等の実施については、現職の教員、指導主事らを通して情報を収集することができた。 全体としては、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①国内における現状の調査、②海外における体制と指導法の調査、③②の国内教育現場における実現性に関する調査を行い、教員支援のためのモデルを開発する。H27年度の計画は以下のとおりである。 ①のうち、教育委員会への質問紙調査は一定程度外国人児童生徒が在籍する地域を中心に実施する予定である。あわせて学校訪問を行い、指導担当者、管理職などからJSL児童生徒を含む在籍学級での教科指導の課題とその対応策についてインタビューを行う。 ②について、平成26年度に実施できなかったオーストラリアの調査については、現在も調整を続けておりH27年度に実施の予定である。また、イギリス調査に関しては、H26年度にインタビューした研究者を通して、パートナーシップティーチングの実践の場での課題等を調査するべく調整中である。 ③はH26年度に少数ながら実施したが、引き続き外国人児童生徒教育及びその研修の中心となる現職教員、担当指導主事などにインタビューを行う。
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Causes of Carryover |
残額が生じたのは、購入する機器の機種を変更したこと、専門知識の提供者から謝金辞退の申し入れがあったこと、質問紙調査を延期したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度に実施する質問紙調査およびH26年度調査で実施できなかった訪問調査を実施する際の費用として使用する予定である。
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