2015 Fiscal Year Research-status Report
JSL児童生徒に配慮した教科指導のための教員支援ーモデル構築に向けた調査研究
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26370593
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
菅原 雅枝 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (80594077)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | JSL児童生徒 / 教員支援 / 教科指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語を母語としない(以下、JSL)児童生徒に対する教育では、日本人児童生徒と共に学ぶ在籍学級での教科学習をどのように支援するかが課題となっている。本研究は、その中心的役割を担う教科担当教員を支援する方法を探ることを目的とする。平成27年度の成果は以下の通りである。 ① 国内の状況について、日本語教室担当者の研修会で小規模なアンケートを実施した。30名中16名が「一般の教員がJSL児童生徒支援を学ぶ研修機会はない」とし、その理由として11名が「必要性が認知されていない」と回答した。一方研修を実施している団体としては教育委員会(12)、学校(1)、NPO団体(2)があった。しかし内容は在籍学級での教科指導に焦点化されたものではなく、情報量が十分ではない状況が推測される。 ② 英国には、非母語話者への英語指導担当(以下、EAL)教員の知識やスキルを教科担当教員に伝達するという教員研修の側面を持つ、パートナーシップティーチング(以下、PT)という指導法がある。その具体事例を調査した。PTはEAL児童生徒だけでなく英語話者の指導にも有効であると評価されているが、実施規模の異なる2団体への調査から、効果を上げるには組織的、計画的に取り組む必要があることが示された。特に、事前に実践の意義、達成目標について、学校・教科担当・EAL担当間で合意を形成することが不可欠であった。また、PTが実践できるEAL教員が少なく実践が限られているため、継続的な実施が困難という課題も明らかとなった。 ③ 研修会等の機会に本研究の調査結果を踏まえた情報伝達を行った。複数の学校・教育委員会が在籍学級での一般教員によるJSL児童生徒支援を課題として認識し、そのうちの1校でPT実施に向けた試行が行われた。この学校は平成28年度の研究テーマとしてPTを取り上げ、協力校として継続的に調査を行うこととなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時には、一般教員が在籍学級においてJSL児童生徒の言語文化的背景に基づく困難を理解し、それを支援しつつ日本人児童生徒とともに学べる授業を展開するために、海外の先行事例を整理分析し、伝達の方法について検討することを考えていた。平成27年度に教育現場においてこれまでの調査結果の報告を行ったことで、研究協力の申し入れがあり、調査がはじめられた。これにより、国内の教育現場の実情に即したモデル提示が可能な状況となったことは、予定以上の進展と言える。 一方で「地域の中核教員育成」については、調査によってその重要性が国や外国人児童生徒指導体制を越えて指摘されていることは明確になったものの、継続して自治体、学校管理者、日本語教室担当者に働きかけていくこと以外の具体的活動に進展していない。 したがって、全体としては、ほぼ順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は①国内協力校における調査、②教育委員会等への聞き取り調査、③研究のまとめ、を行う。 ①については、研究協力校の日本語指導担当教員、学級担任、研究主任、管理職にインタビューを行う。パートナーシップティーチング実施校では、導入による教員の意識の変化、実施上の課題に関するインタビューも実施する。同時に、授業実践場面を分析し、教員同士の連携についてその変化を探る。 ②については、①の成果を踏まえ、在籍学級教員を対象としたJSL児童生徒の言語文化的背景に配慮した教科指導に係る研修の可能性、そのための中核教員養成について聞き取り調査を行う。 上記①②に加え、海外での現状と課題を踏まえ、研究のまとめとする予定である。
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Causes of Carryover |
年度途中に、複数の学校から連携研究の可能性が示され、うち1校が遠方であるため、H28年度の研究活動の費用を確保する必要が生じた。また、3月に予定していたシドニー調査が先方の都合でキャンセルとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力校を1ヶ月に1回程度訪問する。また、学会、研究会で実践の報告をする際の旅費として使用する予定である。
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