2014 Fiscal Year Research-status Report
戦前期アジア主義の変容と「日本の記憶」 ―― 郷土とアジアの視点から ――
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26370767
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山崎 功 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (60267458)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近代アジア / 南洋 / 日本アジア関係 / 佐賀 / 南洋貿易 / 記憶 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主として明治期のアジア関連団体である「東邦協会」、大正期日印協会、南洋協会等の活動実態、関係・後継団体、企業などを取り巻く人物に関する基礎的な史資料調査に重点を置き研究を実施した。 「東邦協会」の実質的な代表発起人副島種臣をはじめとする主要メンバー、副島八十六、福州組事件周辺人物として佐賀出身の山口五郎太らに着目。さらにその後副島八十六が「南方専門家」、日印協会理事として頭角を示すと、軌を一にしたかのように田中丸善蔵らによる南洋関係企業活動が活発化したことについて、史資料所在状況、研究整理などを行った。とりわけ地元佐賀とともに「東邦協会」、「日印協会」の活動拠点である東京、第一次大戦下の南洋貿易株式会社と田中丸善蔵らを視野に入れた史資料状況について調査を実施、地元での紹介など成果還元も試みた。また、アジア主義の大きな伏流といわれる鍋島直正から江藤新平、副島種臣らを源とする佐賀閥アジア主義とあわせて、島津斉彬、西郷隆盛らに連なる薩摩閥がいかに合流・展開し、1930年代へとつながっていくのかをめぐる、基礎的な裏付け史資料収集を実施している。南洋専門家として登場する以前の副島八十六、孫文、樋口一葉らをめぐる、明治期の思潮背景についても先行研究・史料の考察をすすめている。さらにこれらと並行して、海外連携共同研究パートナーであるインドネシア国立ガジャマダ大学の連携研究者らと連携、佐賀・九州という郷土ならではの視点をふまえた、日本=アジア関係史における位置付けについて、特にアジア地域からの視点を踏まえた助言を受けた。特に本研究が射程とする明治以降の日本人および日本の対外政策の及ぼした事跡や影響、南方各地に残る「日本の記憶」、対日観についての情報を共有交換討議をすすめている。今後の国内外各地域現地調査の具体的可能性についても検討、研究の中間とりまとめをすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は特に本研究が射程とする明治以降の日本人および日本の対外政策の及ぼした事跡や影響、南方各地に残る「日本の記憶」、対日観についての情報を、東南アジアの視点からの助言を連携研究者らから受けることができ、今後の研究情報・成果の共有交換討議の枠組みも構築することができた。調査協力も得られることになっている。 今後のアジア各地域現地調査の具体的可能性についても検討できており、引き続き研究をすすめていくことが期待できると考えている。 国内における郷土とアジア主義・人物にかかわる基礎的な史資料・事跡・史跡などの把握もすすめており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、日本国内における史資料調査を継続して実施、蓄積整理するとともに、本年度は特に、「東邦協会」新世代(副島種臣ら創業メンバー引退、日露戦争以降)の傑出した人物として位置づけられる副島八十六をはじめとしたインド・南洋団体(日印協会、南洋協会等)関係者に関する史資料調査、事跡・足跡調査を継続する。また、久保田文次氏らによる孫文研究などをふまえて、昨年度浮かび上がった明治後期の日本のアジア関与と国内外思潮を背景とした、解明途上の副島八十六の事跡動向をさらに調査考察できたらと考えている。田中丸善蔵による南洋貿易株式会社をめぐる、大正期アジア南洋認識についても新たな視点を析出すべく準備している。引き続き研究整理と調査の継続をすすめたいと計画している。
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