2016 Fiscal Year Research-status Report
戦前期アジア主義の変容と「日本の記憶」 ―― 郷土とアジアの視点から ――
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26370767
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山崎 功 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 教授 (60267458)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 郷土 / アジア主義 / 経済南進 / 第一次世界大戦 / 佐賀 / ナショナリズム / 伝統回帰 / 国際協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は日本=東南アジア関係史における郷土のアジア主義再考という課題取組みの中で析出された特徴的な佐賀・九州要因の再定置考察総括を行い、成果還元取組みました。代表者はこれまで郷土ゆかりの副島八十六、田中丸善蔵、石橋正二郎ら三人の南方開拓の先駆者の半生を調査、継続発表・公刊してきましたが、本科研研究企画集成として「佐賀大学地域間交流分析に基づく佐賀地域の歴史文化研究―地域学の発展に向けて(交流プロジェクト・伊東昭弘代表・佐賀大学地域学歴史文化研究センター)」の助成により、一般・市民の方々にも手に取りやすいかたちで刊行発信、本科研企画成果社会還元ができました。(『佐賀・九州の南方開拓者たち』海鳥社 平成29年) 平成29年1月21日には佐賀県有田町にて佐賀大芸術地域デザイン学部の支援を受け学術講演・シンポ「佐賀・九州から見た近代日本の南方関与」を開催、国内外研究者の連携協力で国内外研究動向の地域発信を行いました。佐賀・九州郷土ゆかりのアジア主義者らの非合理的なまでの狂おしい熱情は、アジア侵略の陥穽と隣り合わせの危うさも持ちながら、草の根レベルでのアジア主義の理想に結実します。一方で南・東南アジアを射程に入れた平和的経済南進を唱道し南洋に活路を見出した明治リベラリストの気骨あふれる先駆的企業人らをも輩出している事実があります。従来知られることのなかった佐賀・九州人脈の多様な伏流の中に、良質なアジア提携と欧米との協調・平和的経済交流を併せ持つ「アジア主義」を創出しうる可能性を明らかにする途上にあります。大隈に代表される合理主義と江藤・島の流れをくむ激しい伝統回帰の熱情、この佐賀の育んだ両極的な特性の解明と近代日本・アジアに与えた影響の分析を通じて、近代日本の「アジア主義」の限界と可能性を明らかにしようと引き続き研究を継続、地域連携のもとでさらに国際的な成果発信と交流を準備しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にもふれたように、平成29年1月には研究成果の地域社会還元の一環として佐賀県有田町(九州陶磁文化館)において、科研補助金とともに佐賀大芸術地域デザイン学部の支援を受け学術講演・シンポ「佐賀・九州から見た近代日本の南方関与」を開催しました。ここでは国内外研究者の連携協力により本研究分野の国際的な研究動向と成果をわかりやすく紹介してもらうことで、中間成果を地方・郷土から発信を行うことができました。 さらに代表者は、これまで佐賀・九州郷土とゆかりの深い南方開拓の先駆者の半生を調査、継続発表・公刊してきましたが、専門的な学術研究としての刊行発表であったこともあり、今回の郷土・地域社会の視点に立った本科研研究企画の集成・還元を行うことが課題としてありました。そこで平成28年度、佐賀大学地域間交流分析に基づく佐賀地域の歴史文化研究―地域学の発展に向けて―(交流プロジェクト・伊東昭弘代表・佐賀大学地域学歴史文化研究センター)」の助成により、一般・市民のみなさんも手に取りやすいかたちでとりまとめ刊行発信、研究成果の地域社会還元に、一部ながら寄与をすることができたと考えます。(『佐賀・九州の南方開拓者たち』海鳥社 平成29年) こうした研究成果の地域・郷土社会還元を実施するなかで、当該年度に達成途上の課題として残されたのは以下の点です。すなわち本研究企画の眼目であるアジア主義の地域・郷土要因を、国際的・国内外の地域連繋的な視点から再定置し、郷土・地域史のなかのアジア主義をグローバルな文脈のなかで議論再考・海外との連携により発信還元することです。アジア・海外を視野に入れたさらなる国内外への発信還元が喫緊の課題です。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、引き続き研究成果をとりまとめ、国内外研究連携を通じてアジア地域・国際の視点を踏まえたアジア主義の郷土(佐賀・九州)要因の精緻化・国際的な視野をふまえた相対化、海外への文化交流化発信・社会還元を具体的にすすめることが必要と思われます。具体的には、前年度より途上にある東南アジア・欧米の学界・地域社会を対象・相手とした海外調査・研究交流の具体的実施を行います。国内外連携研究のとりまとめと海外発信・相互交流がその最重点となります。
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Causes of Carryover |
平成28年度は特に研究代表者の配置換えとなった新学部発足にあたり、新旧計4教育組織業務調整とカリキュラム再編・施設移転が重なったこと、平成28年10月以降の国際・地域情勢急変を受けたアジア学術交流への配慮など、特に昨年度夏期以降の集中調査・研究会合(海外・国内)の延期に至りました。研究成果自体はとりまとめがすすんでおり、成果刊行、郷土・地域社会還元もすすめることができました。一方で国内外の特にアジアの視点を踏まえた調査・成果発信と交流が課題として残されています。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は昨年度までにおける途上課題となったアジア視点・国際比較を踏まえた国内外研究連携の促進深化と補助事業成果の精緻化が目標です。国内外への効果的発信に向けた成果とりまとめブラッシュアップを目指します。とりわけ現地調査・連繋交流と還元ワークショップなどの具体的実施を計画しています。
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