2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370818
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉澤 誠一郎 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80272615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国近代史 / 辛亥革命 / 中華民国 / 袁世凱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、20世紀初頭の中国の政治史を見直すために、帝制と共和制のふたつの政体の競合と交錯という視点から考察を進めてきた。その際に、皇帝と大総統の地位をめぐる政治的な論理、制度設計や文化的葛藤について、とくに注目した。また、同時代の政治思想・憲法理論を当時の中国人がどのように理解し運用しようとしたのかについて分析することを通じて、今日簡単に使われている帝制や共和制という概念そのものについて再吟味することも企図し、そうすることで中国近代政治史を国際的文脈のなかに位置づけ直す作業を進めた。 今年度は、とくに中華民国初年に袁世凱政権の顧問をつとめたアメリカ人政治学者フランク・グッドナウ(Frank Johnson Goodnow, 1859-1939)の模索を通じて、当時の憲政をめぐる争点に迫ることをめざした。中国近代史を知る者にとって、グッドナウの名は、まずは袁世凱による帝制導入と結びつけて想起される。しかし、グッドナウは、民国初年の憲法起草の試みのなかでも一定の見解を示しており、その経緯を踏まえて帝制問題についても考察する必要がある。 こうして、グッドナウが中国の民主化の可能性をいかに考えていたのかという点に留意しながら、彼の体制構想について一貫した論理を見出すことができた。そして、それを通じて、なぜ彼が帝制を示唆するような論説を書いたのかという古典的な問題についても、彼が当時置かれていた顧問という立場の困難さから、一定の理解を可能とするに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通り、史料調査を進めるとともに、論文として「中華民国顧問グッドナウによる国制の模索」を発表し、またこれとは別のテーマで口頭報告「中華民国袁世凱政権による国家儀礼の模索」(東洋史研究会大会)を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題に即して、さらに史料調査を進めるとともに、最終年度として論文執筆に注力していく予定である。
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Causes of Carryover |
科研費補助金の合理的な使用を行っていたが、多少の残額が生じたので、次年度の補助金と併せて有効に利用するのが望ましいと判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該の研究目的のために、次年度の予算とあわせて有効に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)