2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Reconstruction of Pre-Qin History through Genealogical Materials in the Transmitted and Excavated Texts
Project/Area Number |
26370819
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小寺 敦 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30431828)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 血縁社会 / 先秦時代 / 出土資料 / 清華簡 / 繋年 / 文献 / 楚地域 / 系譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、3年計画の最終年度として、引き続き系譜関係資料の蓄積に努めた。所属機関から復旦大学文史研究院に派遣された機会を活用し、上海博物館を始め、蘇州・寧波などといった上海近隣都市、また北米の美術館・博物館等で資料調査・収集を行った。 そして中国の国際シンポジウム「北京論壇」に参加する機会を得たことを利用し、研究報告「「関於清華簡《繋年》的女性」を行った。楚地域の出土資料である清華簡『繋年』に現れる女性の描かれ方に焦点を当て、『左伝』『国語』など伝世文献との対比を通じて『繋年』の資料的性格を検討した。伝世文献には時として大きな影響力を有する女性が現れるが、『繋年』では同一女性の存在感は概して希薄であり、これは『繋年』が単に資料としての価値観によるのではなく、楚の王居の変遷を描く清華簡『楚居』と共通する部分からみて、楚地域の地域的特色である可能性を唱えた。楚地域は中原文化圏にとって他者であり、これは中原中心史観を見直そうとする本研究の理論面での総括である。 また先秦時代の年代記風同時代資料として他に比類のない清華簡『繋年』について、「清華簡『繋年』訳注・解題」を公表した。そこではその詳細な訳注を作成すると共に、『繋年』の内容がその成書時期に楚が置かれた状況を反映し、その読者は楚に都合よい歴史認識を得たこと、そういう意味で『繋年』は『楚居』とも共通性を有する文献であることを論じた。これは本研究の出土文献研究面における総括である。更に先秦時代の系譜の成立過程を俯瞰し、文献による血縁社会秩序の再編成について、過去に展開した議論に修正を加えつつ執筆したが、これは目下審査中である。 本研究は楚地域出土資料の不断の増加を背景に、当初計画より更に楚地域の歴史に集中して進められることとなったが、それにより目標とする中原中心・『史記』史観的家族史の枠組みの組み替えを実現できたと考えている。
|
Research Products
(3 results)