2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370837
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Research Institution | Niigata University of International and Information Studies |
Principal Investigator |
小林 元裕 新潟国際情報大学, 国際学部, 教授 (80339936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東京裁判 / 中華民国 / 国民政府 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は第二次世界大戦戦勝国の一つとなった中華民国が日本の戦争犯罪を裁いた東京裁判においてどのような役割を果たしたかを総合的に分析するものである。初年度となる平成26年度の研究実施計画では、中国の公文書館に相当し、東京裁判関係の資料を所蔵していると考えられる中国第二歴史档案館での資料公開実現の可能性が低いために同館での資料収集ではなく、中国大陸で大きく進捗しつつある東京裁判研究の状況確認と東京裁判関係資料の出版物購入を中心に研究を進める予定であった。2014年7月19日、中央大学駿河台記念館で開催された「近現代アジア資料と資料デジタル化」ワークショップにおいて馬振犢・中国第二歴史档案館副館長が講演し、東京裁判関係資料の公開については明言しなかったものの、同館は過去利用頻度が高い資料のデジタル化を優先して2017年までに公開資料のデジタル化を完了すると公表した。2017年という予定が公言された意義は大きく、本研究の最終年度までに資料が公開される可能性が強まった。そこで平成27年度は、上海交通大学東京裁判研究センターが積極的に出版を進めている東京裁判関係の資料集ー東京裁判研究叢書をはじめ、『遠東国際軍事法庭庭審記録索引、附録(全3冊)』、『日本戦犯的侵華罪行自供(全11冊)』、さらには東京裁判で検察官を務めた向哲濬の活動を支えた倪征オウの回想録『淡泊従容莅海牙』などを入手し分析した。これらの資料から中国に関係する部分を抽出し、中国判事・検事が他国の裁判官・検事団とどのように関係を築き、どのように影響を及ぼし合ったのか等を明らかにしようとし、東京裁判判事の「梅汝ゴウ」、同検事を務めた「向哲濬」の簡単な伝記記事をまとめた。また2014年10月、中国における東京裁判研究の第一人者である宋志勇・南開大学教授が来日した際に東京で面会し、研究状況に関する情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記「研究実績の概要」に記した通り、平成26年度は中国での東京裁判の研究動向整理と出版物による資料収集作業を目的としていたため、達成度として必ずしも遅れているわけではない。しかし、入手した資料から、中国に関係する部分を抽出し、中国判事・検事が他国の裁判官・検事団とどのように関係を築き、同時にどのように影響を及ぼし合ったのか等の分析に関しては、「梅汝ゴウ」、「向哲濬」の短い伝記記事(『アジア・太平洋戦争辞典』2015年夏出版予定)をまとめたにとどまり、その他の人物分析にまで手が回らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、中国第二歴史档案館での資料公開情況を睨みながら研究を進めていく。現段階において平成27年度に東京裁判関係資料が公開される可能性はかなり低いと考えられるので、初年度の作業を継続すると同時に、今年度出版が予告されている『遠東国際軍事法庭審判証拠文献集成(極東国際軍事法廷裁判証拠文献集成)』全50巻(東京審判文献叢刊委員会編、国家図書館出版社)等を購入して中国における出版資料の内容確認と整理を行う。2015年は中国にとって抗日戦争勝利70周年の記念すべき年であり、日中戦争関係の資料集が大量に出版されるのは確実であり、上海交通大学東京裁判研究センターが東京裁判関係の資料を出版していくのは間違いない。これらの出版状況に注意するのと同時に中国や他国・地域における東京裁判研究の進捗状況にも目を配る必要がある。また上海、台北、米スタンフォード大学等での原資料収集も着実に実行していきたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度当初は『遠東国際軍事法庭審判記録(極東国際軍事法廷裁判記)』全80巻(東京審判文献叢刊編委会編、国家図書館出版社・上海交通大学出版社)を購入し、この資料から中国判事、検事らの動向を抽出して東京裁判における中国の動向を分析する予定であった。しかし、急激な円安の進行により書籍価格が高騰し、予算内で同書の購入が不可能となった。また東京裁判における中国側の動向を法廷記録から抜粋した『遠東国際軍事法庭庭審記録・中国部分』(上海交通大学出版社)の出版が開始されたため、こちらの資料を利用して当面の作業が可能となったことから、物品費に余りが生じた。また当初、天津南開大学の宋志勇教授を訪問して中国における東京裁判研究の動向を調査するために中国天津に出張する予定だったが、2014年10月、宋教授が来日して同氏から直接話を聞くことができたために国外出張旅費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り『極東国際軍事法廷証拠文献集成(遠東国際軍事法廷証拠文献集成)(全50冊)』を購入して同書の分析を行う。また上海交通大学東京裁判研究センター、もしくは台北国史館への調査出張に使用する。
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Research Products
(3 results)