古代・中世の北海道における儀礼に関する考古学的研究

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26370903
• Research Institution: Tokai University
• Principal Investigator: 内山 幸子 東海大学, 札幌教養教育センター, 准教授 (20548739)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: アイヌ文化期 / オホーツク文化期 / 松法川遺跡 / 儀礼 / 火

Outline of Annual Research Achievements

アイヌ文化期の各種儀礼についての事例を集めるため、関連書籍の収集と記載内容の整理にあたった。アイヌ文化期については、発掘調査で明らかになった内容以外に、これまでに蓄積された古老に対する聞き取り調査や伝承、神謡などからうかがい知れる情報がきわめて膨大なため、今年度は考古学の発掘報告書に掲載された内容については原則取り上げず、考古学以外の分野での情報を網羅的に収集・整理することに努めた。
また、オホーツク文化期の儀礼の詳細を明らかにするため、同文化期を代表する遺跡であるにも関わらず、資料調査が不十分な松法川遺跡（北海道羅臼町）から出土した資料（おもに骨角器）について、羅臼町郷土資料館にて観察・分析を行った。その結果、これらの資料も、2014年度に国立歴史民俗博物館（千葉県佐倉市）で観察・分析を行った動物遺体と同様、灰白色に変色し、形状も収縮・変形するなど、熱を受けた痕跡が明らかであった。熱による原状変更のため、器種が不明な資料が多い点は否めないが、同遺跡で住居や動物遺体などの多くが焼けていることを考え合わせれば、これら骨角器を中心とする資料についても、当時の遺跡の担い手が何らかの意図をもって焼いた可能性が高い。その意図については、不要品として遺棄するのにわざわざ火をおこしたとみなすよりも、儀礼的意図によって焼いた可能性が高いと考えられよう。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

アイヌ文化期に関する書籍（北海道内だけでなく、サハリンや千島列島のアイヌについて記した書籍も含む）がきわめて多く、研究分野も多岐にわたるため、儀礼について触れた情報を網羅的に抽出・整理する作業が終了しきれなかった。さらに、8月に妊娠が判明したことにより、当初計画していた国内での資料調査や成果報告、サハリンでの資料調査が計画通りに実行できなかったことが、研究がやや遅れることに至った主な要因である。

Strategy for Future Research Activity

2016年度は産前・産後休暇と育児休暇のため1年間研究を中断するが、研究を再開する予定の2017年度には、まず、2015年度に収集したアイヌ文化期の儀礼に関する情報について整理し、まとめることを目指す。
さらに、すでにこれまでの研究でほぼ全容がつかめているオホーツク文化期を除いた擦文文化期とアイヌ文化期の住居の集成に力を入れる予定である。アイヌ文化期の住居については、近年、活発化している発掘調査にもとづく成果を中心に扱う。

Causes of Carryover

8月に妊娠が判明したことにより、当初計画していた出張を伴う国内外での資料調査や成果報告が十分にできなかったのが主な要因である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究再開後も、長期間の出張を伴う資料調査は引き続き実施が難しいことが予想されるため、収蔵先から貸借できる資料は可能な限り貸借し、現地にその都度行かなくても分析量を十分確保できるよう努める。このためには、事前に資料の収蔵機関との綿密な交渉が不可欠であり、研究再開後すぐに交渉を始める予定としている。また、これに伴い、資料の貸借による運搬費の増額を計画している。