2014 Fiscal Year Research-status Report
「ホームレスの居住空間の実証的研究-貧困地区・市民団体・税制・住宅政策の再検討」
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26380011
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
長谷川 貴陽史 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (20374176)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ホームレス / 貧困 / 社会的排除 / 住環境 / 市民団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)ホームレスや低層所得者層が貧困地区に集住し、地域の居住環境が劣悪化している実態を分析するとともに、(2)そうした貧困地区の改善に向けて、市民団体の活動を促進し、寄付税制を改革し、住宅政策を改善するための方途を模索することを目的とする。今年度は(1)の作業を中心に行った。具体的には東京都を対象として、①社会生活の実態(ホームレス数、生活保護受給者数、刑法犯発生件数、平均寿命、結核罹患率、路線価など)と②嫌忌施設・福祉施設の立地(火葬場数、廃棄物処理場数、簡易宿泊所数、無料低額宿泊所数など)について、各々に地域的な偏りが見られないか、①②に相関関係が見られないかを分析した。検討にあたっては、社会学者・橋本健二による23区の地域区分に、多摩西部地区を付加した地域区分を用いた。 検討の結果、地域によって平均所得(山手地区・中央地区は高い)、平均寿命(下町地区・多摩西部地区は短い)、生活保護受給者数(下町地区は多い)、ホームレス数(下町地区の一部は特に多い)、結核罹患率(下町地区の一部が極度に高い)などに偏りが見られた。また、刑法犯発生件数と結核罹患率との間には顕著な相関がみられた。他方、嫌忌施設には立地に偏りが見られるものもあれば(廃棄物処理場、簡易宿泊所、無料低額宿泊所)、そうでないものもあった(火葬場)。なお、無料低額宿泊所と地価との間には相関関係が見られたが、因果関係は不明であった。以上の分析成果は、中央大学理工学部の学生との共同研究による部分が大きい。 なお、研究成果の一部については、2014年7月にパシフィコ横浜で開催された国際社会学会のシンポジウムで申請者が報告した(報告題目は「The Widening Disparity of Cities and Shrinking Districts in Tokyo」であった)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京都を具体的な対象として、貧困地区の実態を公式の統計を用いて具体的に把握できているからである。社会実態もそうであるが、嫌忌施設や福祉施設の立地についても分析し、かつ社会実態と施設立地との相関関係の分析についても踏み込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、まず東京都のみならず、当初の調査対象地区であった大阪市についてもデータを収集し、統計的な分析を行うことがあげられる。 また、昨年度の課題の一部でもあったホームレス・低所得者層の生活実態調査に加え、今年度の主要な課題である日米の市民団体の活動分析をも行ってゆきたい。具体的には、国内では東京都および大阪市の市民団体、海外ではカリフォルニア州内のホームレス支援市民団体を中心に調査を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
①本年度は地価のヘドニック分析を本格的に行うことができず、地価データの入手やデータ加工に予定していた予算を費消しなかったこと、②東京都内の分析に集中したため、大阪市など国内の他の都道府県への旅費を費消しなかったこと、③ホームレスや低所得者層の実態調査で謝金等を費消しなかったことが、次年度使用額が生じた主要な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、①大阪市など国内の他の都道府県に旅費を費消し、分析対象を拡大するとともに、②ホームレスや低所得者層への実態調査をも行うことで、有効かつ適正に助成金を支出したいと考える。なお、当初予定していたヘドニック分析については、地価データが入手でき、かつ調査協力者となる理系研究者の助力が得られれば、実施したいと考える。
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