2015 Fiscal Year Research-status Report
裁判員評議コミュニケーションの相互行為分析―裁判員はどのように考え議論するか
Project/Area Number |
26380014
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北村 隆憲 東海大学, 法学部, 教授 (00234279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 郁代 関西学院大学, 法学部, 教授 (40434881)
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 裁判員評議 / エスノメソドロジー / 会話分析 / 法的コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は,研究方法論と研究成果とを共有するために研究会を開催した.元裁判官を研究会に招き,昨年度からこの企画の実行を計画していたが,2015年度末に,2016年度9月に実施予定のところまでこぎつけた.現職裁判3名と市民6名をリクルートできることとなり,わが国で初めての裁判所関与以外で行われる現職裁判官による模擬評議の実施を準備することができた.模擬評議のデータを会話分析とエスノメソドロジーの手法によって分析するものであり,各共同研究者は,このための方法論の洗練を行った.研究業績としては,評議分析ではないが,法的コミュニケーションの一つである「ミディエーション(調停)」の相互行為を録画したデータに基づいて,会話分析によってそのメカニズム,特に紛争当事者の「言い争い」が生じる相互行為上のメカニズムについての知見を発表した(北村「ミディエーションの相互行為分析の試み―エスノメソドロジーと会話分析の視点から」東海法学51号).また,法的コミュニケーション分析能力を高めるために,会話分析の海外の古典的な著名業績を翻訳した(P.ドリュー著・北村訳「非難の管理」東海法学50,51号).また,エスノメソドロジーと会話分析の方法論について検討した(北村「解釈法社会学とエスノメソドロジー/会話分析」西田英一・山本顕治編,振舞いとしての方―知と臨床の法社会学 法律文化社).また,模擬評議における裁判官の活動について,国際学会で報告した(Takanori Kitamura "How professional judges demonstrate he 'facts' during mixed jury deliberation”The 4th Asian Law and Society Conference,Waseda University.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模擬評議の実施については,現職裁判官のリクルートへの交渉が難航したが,2016年度に実施することができることとなり,新たな貴重な分析データが入手される予定となった.このため,現職裁判官関与の模擬評議の予定は遅延したが,全体として,手持ちのデータの分析を進めていることから,全体としてはおおむね順調に進行しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の9月初頭に,現職裁判官3名が参加する模擬評議を実施して,録画を行い,分析データを確保する.裁判官には,録画データをその後視聴しながらインタビューを行い,実践者としての相互行為上の専門的志向についての情報を得て,エスノグラフィックな情報として,相互行為分析に生かしていく予定である.集中的にこのデータを分析し,知見を国際学会に報告するとともに,国内の学会誌に論文を発表する予定である.
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Causes of Carryover |
2016年度に実施する,現職裁判官3名と市民6名による模擬裁判・模擬評議を企画実施するために,2015年度の予算をできる限り2016年度に繰り越す努力をしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には,現職裁判官3名を含む模擬評議を実施するため,現職裁判官への専門的知識の供与と謝礼金,および実施のための諸経費が多く発生するため,これに使用する予定である.また,この分析を早急に複数の国際学会で報告するために,海外渡航費などが発生する予定である.
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