2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380111
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡本 裕樹 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (90372523)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組合 / 約束 / 合意 / 契約 / 合同行為 / 複合契約取引 / 星形契約群 / ネットワーク契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、三当事者以上による契約締結の構造に関する分析を進めた。 分析視角としては、二つを提示していたが、そのうち、意思表示の態様をめぐっては、いくつかの締結態様の可能性を提示する方向で検討を進めている。敷衍すると、二当事者間契約の成立には、対立する2つ以上の意思表示の合致が必要と説明されてきているところ、裁判例を分析すると、全当事者間での意思表示の交換を要求するかのような裁判例のほか、全当事者が協議により組合規約を作成し、これに同意する態様、当事者の一部が組合規約を作成し、他の当事者がこれに同意する態様、および、当事者以外の者が作成した組合規約に、全当事者が同意する態様も見受けられる。 もう一つの視角は、複合契約取引と組合契約との区別方法である。多様な複合契約取引の類型と形式的に照合すると、先述の組合契約の各締結態様と、複合契約取引のいくつかの取引類型の態様とで、顕著な類似性がみられる。しかし、組合契約であれば、一つの契約の成立が認められるのに対し、複合契約取引に際しては、契約は複数成立するものとされ、それらについて法的一体性は否定されるのが通常である。こうした違いの主因としは、差当り、全取引参加者にとり自己の事務といえる共同事業の有無と、取引参加者以外の者に対する活動の存否が挙げられる。 こうした検討を進める中で、更なる課題として、契約の拘束力を発生させる合意に関する基礎理論の再確認と、合意を構成する意思表示の在り様と合意から発生する債権関係との対応関係の再検討について、それぞれの必要性が浮かび上がってきた。前者は、二当事者間契約にも関わり、慎重な分析が求められ、また、後者は、三当事者以上の契約の履行段階の規律も視野に入れなければならない。 先行業績による研究成果を最大限尊重しながら、裁判実務にも受容されうる理論構築を目標として、さらに研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度途中の移籍により、前所属先と現所属先で、それぞれ約1年分の講義・研究指導を二重に負担したことで、本研究課題に割ける時間が限定されてしまった。 また、前所属先で生じていた校務上の問題が、全ての活動の阻害要因となり、本研究が遅延する主因となった。 さらに、研究環境の変化に伴い、現所属先での資料の入手方法に慣れるまで時間がかかったことで、想定通りの資料収集が若干行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前所属先での校務上の問題は、ほぼ解消され、現所属先での校務負担も落ち着いてきたことから、これまで以上に、本研究課題に集中していきたい。 その際、引き続き、日本法とドイツ法に関する資料をもとに、作業を進めていく。平成27年度から繰り越した補助金については、主として、これまで滞り気味のドイツ法に関する資料の収集費用に充てる。具体的には、契約の一般的締結構造や、組合契約をはじめとする三当事者以上の契約の締約構造に関する資料、ならびに、複数の債権・債務関係間の履行に関する関連性についての資料を重点的に検証していきたい。 また、現在、日本法における組合契約の締結構造に関する論文の脱稿間近であり、これを公表するとともに、比較対象としてのドイツ法に関する論文の公表に向けた準備を進めていく。さらに、三当事者以上の契約の履行段階に関する規律の検討に向けた作業も行っていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度10月からの所属先の変更が予定されていた中で、同9月までの前所属先では、科研費により購入した図書が大学に帰属し、移籍後の所属先に移転することが困難であったことから、平成26年度から上半期まで図書資料購入を控えたために、これに充当予定であった経費が支出されなかった。 また、移籍後の、図書資料購入手続きに関する不慣れや、校務負担を優先したことによる出張の差し控えが原因で、当初の予定にしたがった経費支出が行われなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度中に支出されなかった経費を、現所属先での研究設備の充実に使用するとともに、若干遅れている研究計画の達成に向けて、そのための資料収集や出張の費用として充当する予定である。
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