2015 Fiscal Year Research-status Report
現代契約条項の法学・言語学的考察~英文契約書との対比を通して~
Project/Area Number |
26380132
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松嶋 隆弘 日本大学, 法学部, 教授 (20287569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 大祐 日本大学, 大学院法務研究科, 助教 (10648504)
熊木 秀行 日本大学, 国際関係学部, 助教 (20609432)
平 裕介 日本大学, 大学院法務研究科, 助教 (30648506)
工藤 聡一 日本大学, 法学部, 教授 (40337126) [Withdrawn]
萬澤 陽子 専修大学, 法学部, 講師 (50434204)
大久保 拓也 日本大学, 法学部, 教授 (90333103)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 契約 / 要件事実 / 英文契約書 / 法言語学 / 完全合意条項 / 民法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、下記の作業を行った。第1に、研究代表者が平成26年度に入手した代表的な日米の契約条項と約款について分析を行った。 第2に、日本の契約書上の契約条項については、前提となる民法(債権法)の改正作業をにらみつつ作業を行った。具体的には、(1)民法(債権法)改正の証明責任の観点からの分析・検討を行うとともに(研究代表者が日弁連民事裁判委員会で同作業に関与したので、その知見を利用した。)、その中に含まれるであろう規範的構成要件の主張・立証について、実務家と共同で勉強会を行った(これは平成26年度から継続して開催されてきたものであり、その成果は平成27年度において実務書として刊行された。)。(2)次に、英文契約書の解釈について、研究代表者および研究分担者がその成果となる学術論文を刊行した。(3)約款については、前記航空会社の約款を踏まえた上で、実務の現状が、必ずしもその約款の定め通りに行われていない現実を検討すべく、研究代表者が平成26年度に引き続き、いくつかの未公刊航空裁判例について検討の上、評釈を行い、その成果を公表した。 第3に、上記検討の過程で、(1)民法(債権法)改正への本格的対応、(2)要件事実的観点からの検討、(3)英米法の司法制度、同法における解釈手法の正確な理解が不可欠であることが共通に認識され、これが次年度の課題として引き続き検討することが意識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究概要」記載の通り、平成26年度に行った契約条項や約款等一次資料をもとに、研究課題である、(1)民法(債権法)改正への本格的対応、(2)要件事実的観点からの検討、(3)英米法の司法制度・同法における解釈手法の正確な理解をすすめるべく研究を行った。 他方で、民法(債権法)改正は、ほぼ一世紀ぶりの大改正であり、これにより契約条項(本研究の対象である)が前提とする「条文」自体が大きく変更される。特に平成27年度は、前年度末に公表された改正法案をもとに研究を行ってきた。その際、改めて「要件事実」の重要性が意識されるに至り、研究代表者を始め、本研究参加者一同は、改めて要件事実を勉強しなければならないことになった。そこで、平成27年度は、研究会において、研究者教員を招いて活発な意見交換を行った。加えて、英文契約書ドラフトに当たっては、単に和文契約と対比するのみではなく、そのバックグラウンドである英米法、とりわけその司法制度やその下における解釈手法までも理解する必要があることから、前年度に引き続き、Contractのテキストだけでなく、English Legal Systemにまで遡った勉強を行った。 以上のことをまとめると、概算であるが、おおむね順調に進展していると評価できよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、下記に留意しつつ研究を行う。 第1に民法(債権法)改正については、今後国会で可決・成立されることになるであろうから、前年度に引き続き、改正後の条文の解釈論を研究してゆくこととしたい。 第2に、要件事実に関するより掘り下げた理解を進めることとしたい。本研究を遂行する上で、要件事実(特に、司法研究所流のいわゆる「要件事実論」)を避けて通ることはできない。一昨年度・昨年度に引き続き、平成28年度も、要件事実論について、研究会を開催するなどして認識を深めてゆくことを計画している。なお、行政法学においても要件事実に関して議論があり、行政法専攻の分担研究者の有するこのような要件事実に関する行政法学の知見についても、同認識の深化・共有化等にこれを役立てることを、昨年度に引き続き計画しているところである。 第3に、比較法的知見の一層の摂取をあげたい。司法研究所流の「要件事実論」は、我が国の固有の実務(特に司法研究所)から発生したものであるが、このことからわかるように、契約条項を検討する上でも、司法「制度」に対する目配りを欠かすことはできない。英文契約との対比を核とする本研究においては、英米法(研究代表者の場合、イギリス法)の司法制度やそこでの解釈手法(例えば、literal rule、golden rule、mischief ruleといった解釈手法)について、より深い認識を得る必要がある。この点についても資料収集・調査を行い、研究に厚みを加えてゆくこととを企画している。
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Causes of Carryover |
研究自体は順調に進捗しているが、洋書購入代金や旅費等について年次受領総額に対して使用されなかったものがある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画の遂行上、予算の完全執行を期する。
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