2016 Fiscal Year Annual Research Report
Okinawa Developmento Promotion Block Grant and Okinawan Political and Adminisitative change
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26380175
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
島袋 純 琉球大学, 教育学部, 教授 (40253934)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 沖縄振興体制 / 沖縄振興一括交付金 / 沖縄振興等別推進交付金 / PDCAマネジメントサイクル / 成果指標 / 沖縄振興計画 / 沖縄振興予算 / PDCA検証シート |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄振興一括交付金制度、特にソフト交付金といわれる沖縄振興特別推進交付金がいったい沖縄の政治行政に何をもたらしたのか。 補助率が高く、裁量の大きいあるいは自由度の高い補助金、というメリットが強調されていたが、この交付金は、あくまで国庫補助金の一形態に過ぎず、補助金適正化法が適用され、政府の交付要綱に拘束される。その交付要綱は、申請時に事業目的の沖縄振興計画上の位置づけの明確化を行い、活動指標のみならず成果指標及び成果目標を設定しなければならず、そして事業の途中及び終了後の具体的検証を求めている。 多くの聞き取り調査によって、それを作りこんでいく現場には、まだまだ能力不足、安易な事業化、PDCAマネジメント・サイクルを意識することすらできない状況も多々見受けられた。議会及び議員においても、成果目標の設定とそれに基づく事業の検証は、議会の議論を見る限り非常に少ない。今までの高率補助事業と比べて、はたして、議会議員と行政首長や幹部や職員は、目標管理型の自治体経営の能力を格段に向上させたとは言い難い。 さらに大きなこの交付金の問題は、国が県や市町村を統制する手段になりうる制度ということが判明した。実際に予算執行率の検証を根拠に2017年度、国は大幅な一括交付金の減額を実施した。一括交付金の導入を表立って正当化する公の論理にはいっさい、辺野古や基地問題との関連性は出てこないのである。しかし、裏の本音の部分では、基地受け入れと引き換えに獲得している、それしか根拠があり得ない補助金だという認識が広くそして深く浸透している。 つまり、一括交付金は、基地を押し付ける機能、それを正当化する政治的機能さえ持っている。あまりにも不安的で、現場のニーズに関係なく、国対沖縄の政治的な情勢、政治的な意図によって、大きく左右されてしまう行財政制度であり、沖縄の自治にとって安定した発展が望める展望がない。
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