2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380224
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
池田 亮 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 准教授 (60447589)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / 冷戦 / 北アフリカ / 中東 / イギリス / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第三世界で展開された冷戦に、ヨーロッパの(旧)植民地宗主国がどのように関わったのか、という観点から論文を執筆した。従来、第三世界における冷戦は、主に米ソ冷戦の観点から研究されてきた。その中でヨーロッパ宗主国は、米ソが植民地解放と新興国の国家建設に協力する中、勢力の後退を強いられる存在として描かれてきた。しかし本稿は、旧宗主国が現在でも旧植民地で一定の影響力を保っており、かつアメリカにとっても冷戦の遂行上、重要な同盟国であったことに注目する。事例としては、フランスによるモロッコの独立承認と、スエズ危機におけるイギリスの対エジプト攻撃を取り上げ、両国の動機を検討する。それによって、第三世界における脱植民地化への英仏の対応は、冷戦政策の側面をも持っていたことを指摘する。それぞれの決定は、モロッコと中東のアラブ諸国が、中立主義を選択するのを防ぐためになされた。それらの国を西側陣営に留め置き、重要な資源を安価に供給させ、自国の資本主義経済の繁栄を維持することが宗主国、特にイギリスの目的であったと考えられる。 つまり、ヨーロッパ(旧)宗主国は、冷戦期にひたすら影響力の後退を強いられてきた受動的な存在だったのではない。アメリカと協調と対立を繰り返しつつも、ソ連の影響力の浸透を防ぐことが、(旧)植民地地域での政策の目的だったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1956年のスエズ危機、特にイギリスが対エジプト戦争を決定した動機を分析するのが主な目的であった。しかし、いわゆるスエズ戦争の研究に取り掛かる前に、フランスの対北アフリカ政策を研究する必要性を認識したため、現在まで後者を主題に研究してきた。このテーマについては平成27年5月に二冊目の書籍を出版予定であり、順調に研究が進展している。当初の予定とは異なるが、フランスの北アフリカ政策はスエズ危機の前史にあたるため、スエズ戦争研究を深化させるうえで大いに貢献するものである。これらの理由から、全体として研究はおおむね順調に進呈していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の書籍を公刊後、冷戦と脱植民地化の相互作用について、より一般的な論考を平成27年度中に発表予定である。その後、当初の予定通り、1950年代中葉の中東における冷戦と脱植民地化の相互作用を、スエズ戦争を題材に取り上げつつ、本格的に分析する計画である。具体的には、平成27年度中に研究会で報告し、さらに論考を英文ジャーナルに投稿する計画である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、私の研究室で長時間の作業を行うアシスタントを探すことができず、その結果として人件費の支出が予想外に低かった。また平成26年度は大学から比較的長期の海外出張を命じられたため、研究のための出張を断念したケースがあった。平成27年度はこのような状況がないと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度以後は、アシスタントを積極的に雇用できる予定であり、その分の支出を見込んでいる。また研究目的の出張にも時間をさける予定である。さらに、平成26年度とは異なって著書(単著、共編著)の執筆も予定していないため、比較的長期の出張が可能になり、旅費関連の支出も増加すると予測している。
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