2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380224
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
池田 亮 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 准教授 (60447589)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / 冷戦 / 西側同盟 / 北アフリカ / 中東 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度も平成26年度に続き、スエズ危機の前史として、主にチュニジアとモロッコの脱植民地化と西側同盟の関係について研究を進めた。5月にはPalgrave Macmillanより The Imperialism of French Decolonisation: French Policy and Anglo-American Response in Tunisia and Morocco, 1950-1956 というタイトルで著書を出版し、2013年に出版した自著よりさらに進んだ議論を展開した。具体的には、フランスはチュニジアとモロッコの脱植民地化を受けて植民地帝国全体の脱植民地化に転換したが、それは対米関係の悪化を招かなかった。仏米間の亀裂が深まるのを防いだのはイギリスであり、イギリスのイニシアチブの結果、西側同盟の結束は保たれた。 続いて12月にはミネルヴァ書房より、共編著『冷戦史を問い直す:「冷戦」と「非冷戦」の境界』を出版した。その中で私は、「帝国=植民地体制」という概念を用いて、第二次大戦後の冷戦と脱植民地化の相互作用を考察した。 さらに、上記の内容を国内外の研究会において報告した。また、スエズ危機自体については研究は大幅には進捗していないものの、7月に研究報告を行い、国際法研究者からコメントをいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は単著を出版し、また共編著も出版した。スエズ危機の前史に関してはほぼ研究を完結させたと考えており、おおむね順調に研究は進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、スエズ危機の前史に関してほぼ研究を完成させたため、今後はスエズ危機の研究を本格的に再開する。具体的にはまず、スエズ戦争の終了後、どのように英仏軍が駐留を続け、さらに撤兵をおこなうのか、英仏政府の決定過程を中心に検討を進めていく。ちょうど同時期、国連緊急軍(UNEF)が結成され、英仏軍に代わって運河地帯に駐留するが、英仏はUNEFに治安維持を引き継ぐという形式をとって撤退する。あくまで両国は運河地帯、そして中東全域にわたる治安維持のためにスエズ戦争を遂行したのだという外観を保とうとしたのであり、このことから中東における影響力をいかに維持しようとしたのかを考察する。 ただその際に、英仏両国政府の認識には微妙な齟齬が見られる。停戦および撤兵の決定を主導したのはイギリス政府であり、フランス政府はそれに追随していた。後者は積極的に停戦と撤兵に同意したのではなく、北アフリカにおけるエジプトの影響力拡大を阻害するために、戦闘行為の継続を希望していた。このような両国の協調と対立関係がどのようにして生まれ、また後のアルジェリア戦争時の英仏関係に反映されていくのか、慎重に検討を進めていきたい。 同時に私は、チュニジア・モロッコ情勢を起点に、フランスが植民地帝国全体の脱植民地化に転換していく過程についても研究を進めている。具体的には、1956年6月に上下院で採択された「基本法」と呼ばれる法律の制定過程であり、スエズ危機を研究するに際し、興味深い視点を提供するものと考えられる。つまり、同年7月にスエズ危機が開始された時点で、フランス政府はすでに脱植民地化に向けて舵を切っていたのであり、この点にも十分に留意してスエズ危機を検討していきたい。
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Causes of Carryover |
本事業初年度(平成26年度)には、著書(単著および共編著)の執筆に多くの時間を費やしたため、資料調査などのために出張する回数を減らさざるを得ず、その分予算の執行が若干遅れてしまった。翌平成27年度は逆に学会報告や資料調査のため出張を多く行うことができたので予算の執行が順調に進んだが、依然としてこの額が次年度使用額として残されてしまったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は引き続き、海外での学会報告(香港)および資料調査(ヨーロッパで1~2回程度)を計画している。
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