2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26380224
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 亮 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60447589)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / 冷戦 / イギリス / フランス / 中東 / 北アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フランスが戦後に脱植民地化に転じる過程を研究し、その成果は9月に公刊された、The International Journal of Francophone Studies に掲載された。従来の研究では、この転換はインドシナ情勢によるものと漠然と論じられてきたが、1956年6月に制定された基本法には、明らかに人民主権による政治共同体の創設という理念が反映されている。このような転換を説明するためには、むしろ1954年7月のチュニジア国内自治の影響が大きかったと考えるべきではないかと考えらえる。こうしたフランスが脱植民地化に転じる過程を解明することは、本研究の課題であるスエズ危機の前史として、フランスが1956年時点ではすでに脱植民地化に転じていたことを立証するためには不可欠であると考えている。またこの論点は、脱植民地化に直面した西側同盟内における対立と協調と密接に関連するものであり、こうした点を平成28年5月および平成29年3月に、それぞれ香港とロンドンで開催されたワークショップにおいて報告を行った。さらに、これらの研究テーマについて資料を収集するために、平成28年11月と平成29年3月にパリで資料調査を行った。 現在、本研究の中心課題であるスエズ危機について研究を進めており、論文を執筆中である。平成29年2月には日本国内での研究会において報告を行い、また平成28年8月には資料調査のためロンドンを訪問した。これらにより判明したことは、スエズ危機を分析する上で、アラブ・イスラエル紛争の文脈を重視すべきだということである。従来、特にイギリスから見たスエズ危機研究はエジプトによる運河国有化とそれへの対応に主に視点が置かれてきたが、同危機がアラブ・イスラエル戦争によって収束したことを考えれば、この紛争の文脈で捉え直す作業が必要だと考えられる。
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