2014 Fiscal Year Research-status Report
幕末外交儀礼の研究――欧米外交官による登城・将軍拝謁儀礼を中心として
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26380226
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
佐野 真由子 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 准教授 (50410519)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外交史 / 国際関係史 / 徳川幕府 / 儀礼 / 幕末 / 連続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幕末期、日本に到来し、さらに駐在するようになった欧米諸国の外交官が徳川将軍の居城に登り、将軍に拝謁するために挙行された儀礼の詳細を紐解き、幕府においてその態様が順次、前例に依拠しつつも新規の要素を取り入れながら整えられていった経過を追跡するものである。報告者が「幕末外交儀礼」と呼ぶこれらの儀式が存在したのは安政4(1857)年から慶応3(1867)年にかけての時期であり、本研究の前段となった研究課題を通じて解明したその前半期に続き、今年度は、後半期の具体的様相を詳細に跡付けることができた。その結果、申請時に「全15件」と考えていた対象儀礼群は、「全17件」と理解すべきであることが判明したため、ここに記しておく。 今年度その内実を明らかにした「幕末外交儀礼」の後半10件は、以下のとおりである。 文久元(1861)年2月23日、アメリカ公使ハリス(遣米使節関連大統領書簡の捧呈)/同年11月5日、アメリカ公使ハリス(開港開市関連国書の捧呈)/文久2年3月28日、アメリカ公使ハリス(帰国挨拶)/同年4月19日、アメリカ公使プリュイン(着任挨拶)/同年5月27日、フランス公使ド=ベルクール(公使昇任、開港開市関連国書の捧呈)/同年閏8月9日、ロシア領事ゴシケーヴィチ(開港開市関連皇帝国書の捧呈)/慶応3(1867)年3月28日、イギリス公使パークス(新将軍慶喜が大坂城にて引見。内謁見・饗応は3月25日)/同日、オランダ総領事ファン=ポルスブルック(同上。内謁見・饗応は3月26日)/同日、フランス公使ロッシュ(同上。内謁見・饗応は3月27日)/同年4月1日、アメリカ公使ヴァン=ヴァルケンバーグ(同上。内謁見・饗応は3月29日)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述した幕末外交儀礼後半期の具体的解明には、申請時において3ヵ年計画の2年目までをあてる計画であったが、初年度にほぼ完了することができた。このため2年度目からは、全体の連関性についてのより深い考察や、周辺諸条件との関係検証などに入ることができ、また、研究発表の機会をより多く持つことが可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの詳細把握を経て今後の研究においては、「開国」以前の近世における近隣アジア諸国との交際から欧米諸国との外交へ、さらに、こののち明治新政府が成立し、ほどなく機能としてはこれを引き継いでいくことになる、いわゆる「ミカドの外交儀礼」への道程において、何が連続し、何が断絶したのか、徳川幕府による外交儀礼検討の意義を多角的に考察する段階に入る。この過程を通じて、口頭による研究発表等を重ねながら、単行本の形での成果発表の準備を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は前述のとおりきわめて順調に調査が進展し、上に報告する支出額の範囲で十分な成果を上げることができた。ここからは、これまでに具体的な解明した内容を見渡し、幕末外交儀礼の時系列的展開や、周辺諸条件との連関をさらに精査する段階に入るため、いったん研究を区切り、次年度に資金的余裕を残して大きな展開を構想することが効果的であると考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は国内外において範囲を広げた史料調査を行い、単行本化を意識した稠密な考察を行っていくが、主にそのための旅費と史料複写・購入のために、2年度以降に予定していた予算と合算して使用する。
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