2015 Fiscal Year Research-status Report
幕末外交儀礼の研究――欧米外交官による登城・将軍拝謁儀礼を中心として
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26380226
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
佐野 真由子 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 准教授 (50410519)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外交史 / 国際関係史 / 徳川幕府 / 朝鮮通信使 / 欧米外交官 / 儀礼 / 幕末 / 連続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幕末最後の11年間に、徳川幕府の手によって欧米外交官を相手とする外交儀礼の様式が整えられた経緯を、将軍の居城における拝謁儀礼を中心としてつぶさに紐解き、これまでの国際関係史研究、また儀礼研究において見落とされてきたその意義を明らかにしようとするものである。前年度までに、全17件に及ぶ将軍拝謁儀礼の実際が解明されていたことから、今年度はそのうえに立って、プロセス全体としての歴史的意義を考察することに力を入れた。 幕府による儀礼の検討は、11年間の入口においては、日本の国際関係を、いわゆる「開国」以前の近世における近世アジア諸国との交際から、欧米諸国との西洋国際法に基づく関係へと連続的につなぐ役割を果たした。11年間の終わりにおいては、日本の儀礼伝統に則りながら、西洋国際法とも齟齬のない外交儀礼が事実上の完成に至り、徳川外交の集大成とも言えるその様式は、明治の天皇のもとでの近代外交へ、スムーズな移行を可能にした。 さらに、本研究における分析の対象には、狭義のいわゆる「式次第」のみならず、参列者の装束や、饗応の献立といった広範な文化史の要素が含まれるため、たとえば服飾史、食物史といった多方面にわたる専門分野の知見を十分に参照することが欠かせない。今年度はそれらの多様な側面を統合することに努めた。 なお、今年度は前年度に続き、こうした成果を海外で発表し(前年度「学会発表」欄に記載)、とくに明治維新期を専門とする諸外国の研究者らと議論する機会を得たほか、単著として刊行する準備を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時においては、幕末外交儀礼全件の具体的な解明ののち、総合的な歴史的意義の考察をまとめるまでに3ヵ年を要する予定であったが、それらをこれまでにほぼ完了し、単著刊行の準備を進めることができたのは、計画以上の進展と考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目にあたる来年度は、ここまでの研究から新たに浮上した課題に早期に着手する。具体的には、同時期に「開国」プロセスを経験した近隣アジア諸国における外交儀礼形成過程との比較や、幕府遣外使節の諸外国における外交儀礼体験との関連性を検討する等の方向を展望している。 従来も自身の研究に活用してきた日本および諸外国の外交文書群をあらためて見直し、儀礼様式の発達過程におけるアジア諸国間の横の連関を見出していくことに注力すると同時に、ここまでの研究成果をより積極的に発表し、外交儀礼の国際比較を視野に入れた次段階の研究に必要な、人的ネットワークの獲得にも努めるつもりである。
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