2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380325
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
竹中 康治 日本大学, 経済学部, 教授 (50188207)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔡 大鵬 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20402381)
野方 大輔 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (20614621)
土井 直 日本大学, 経済学部, 助手 (20727490)
加藤 一誠 日本大学, 経済学部, 教授 (60290269)
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 教授 (80361856)
小林 信治 日本大学, 経済学部, 教授 (90258509)
手塚 広一郎 日本大学, 経済学部, 教授 (90323914)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 推測的変動 / consistentな推測的変動均衡 / 寡占モデル / 決定変数の選択問題 / 不完備情報 / クールノー均衡 / ミスリード誘因 / 市場占有率データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は理論モデルの構築とその実証である。(1)理論モデルは(ⅰ)生産量決定のモデルと(ⅱ)投資モデルからなる。平成26年度は、理論モデルについて生産量モデルの構築が終了した。実証面では最終年度に予定する実証研究のためにデータの入手可能性について調査した。 生産費用は過去(前期)の投資結果に依存し、今期の投資は来期以降の生産費用に影響する。本研究では異質財複占市場と線形の需要曲線を仮定する。ライバルの反応曲線の位置が無知(ただし、その傾きについては既知とする)であるときに、非ゼロの推測的変動はライバルの反応曲線の位置を知るための試行錯誤的な行動を反映すると理解する。このように推測的変動を非完備情報下での行動として解釈して、consistentな推測的変動均衡を導く。それによって次の2つの結論が結論を導くことができた。次の命題1から、寡占モデルを扱う際に直面する決定変数の選択問題に悩む必要はないことになる。ただし、本研究は推測的変動の存在意義を不完備情報に求めているから、不完備情報下で果たしてどの企業も自身の芯の反応曲線にそって行動するのか、あるいはライバルに偽りの情報を与えるのか、議論しなければならない。それが命題2である。 命題1:一意的に成立する均衡は生産量を決定変数とする場合も、価格を決定変数とする場合も同一である。 命題2:ライバルの反応曲線が無知であるとき、もしconsistentな推測的変動均衡を前提にしているならば、どの企業もライバルを偽る誘因は存在しない。しかし、クールノー均衡ではどの企業も偽る誘因をもつ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
推測的変動は理論的には多くの批判にさらされてきた。最大の問題は①推測的変動が内生モデルを伴わないということと、②非ゼロの推測的変動の背景が不明であるということである。consistentな推測的変動均衡を使うことによって、①の問題を回避できるが、②の問題は回避できない。consistentな推測的変動均衡が寡占モデルの中心になり得なかったのは、推測的変動がなぜ必要なのかを整合的な形で明示できなかったことによる。すなわち、推測的変動の存在意義は不完備情報に求められるとしても、不完備情報の下で生じるもう一つの問題が存在したからではなかろうか。 前述したように、不完備情報下で生じる問題はどの企業も自身の反応曲線に従ってライバルの決定に正直に反応するか、である。もし正直に反応するのであれば、推測的変動はライバルの需要曲線の位置について無知であるという不完備情報下でその存在意義が存在するということになり、不完備情報下での寡占理論と位置付けられる。 本研究で明らかにされたconsistentな推測的変動均衡のもう一つの意義は上述した命題2にある。寡占モデルの構築で悩まされる問題は、決定変数の選択の問題である。構築される寡占モデルが生産量モデルか、価格決定のモデルか、である。通常、同質財市場ではクールノーの生産量決定モデルであり、非同質財市場ではベルトラン的な価格モデルである。こうした決定変数の差、あるいは変化に理論的な理由はない。ただ同質財市場でベルトランモデルを適用しにくい、という理由があるのみである。しかしconsistentな推測的変動均衡が成立する限り、命題1によれば決定変数の選択によって均衡に差は生じない、ということであった。したがって我々は寡占モデル構築の際、決定変数の選択に悩む必要が無いことになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の寡占モデルは生産量決定モデルと投資決定モデルからなる。なぜなら、今期の生産費用は前期の投資によって左右されるし、今期の投資は来期以降の生産費用に影響を与えるからである。投資決定モデルは今期と前期の資本の差に応じて調整費用が生じる。このように考えると、生産量決定モデルは今期の資本量を所与とすると静学的であり、投資決定モデルは動学モデルである。 今後の課題は第1に、この動学モデルを完成させることである。しかも本研究では実証研究も視野に入れているため、データが入手困難である製品別投資規模に代えて、生産量モデルを構築したい。この動学モデルは離散型である。ここでの離散型の採用は動学的推測的変動を利用するためである。ただし、動学的推測的変動は静学的なそれに比べてその意味が全く異なる。 静学的推測的変動が不完備情報下での生産量ないしは価格の均衡までの試行錯誤を反映しているのに対して、動学的推測的変動は動学モデルのクローズド均衡、あるいはフィードバック均衡を描くための便宜にすぎない。この動学的推測的変動も恣意性を持っている。内生的決定のためには、ここでもconsistent概念を応用する。これが第2の課題である。 第3に静学モデルであれ動学モデルであれ、consisten均衡は複占モデルであった。これをn企業均衡に拡張することによって定性的に変化があり得るのかどうかを確認しなければならない。さらに第4に、理論モデルに基づいて実証モデルを構築しなければならない。本研究で非同質財市場を想定しいるが、企業別の価格データは入手できない。そこで、実証モデルは企業別の価格データが無くても適用できるものでなければならない。
|
Causes of Carryover |
竹中の未使用額分1万5638円は図書費が予定額よりも少なかった結果である。野方の未使用額8万2260円は本学での研究会の日程が変更になったため、佐賀県からの旅費・宿泊費の必要がなくなったことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
総額9万7898円は今年度の本学での研究会の開催費用(講師謝礼及び遠距離参加者の旅費)の一部に当てる予定である。
|