2017 Fiscal Year Research-status Report
中小企業におけるイノベーション・プロセスと吸収能力に関する実証的研究
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26380346
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
文能 照之 近畿大学, 経営学部, 教授 (30388491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井戸田 博樹 近畿大学, 経済学部, 教授 (10352957)
辻 正次 神戸国際大学, 経済学部, 教授 (90029918)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イノベーション / 組織学習 / イノベーションプロセス / HRD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、組織が新たな情報や技術を吸収しそれを活用することで、従来にない新しい製品やサービスに変換させるプロセスに焦点を当て、中小企業がイノベーションを創出するために必要な要因を解明にすることにある。これまでの研究成果として、イノベーションの創出には、組織内部に学習プロセスを有していることが重要であるとの結論を導き出している。本年度は、これについてさらに詳細な分析と検討を行うとともに、企業への聞き取り調査を行うことでデータ分析結果の検証、並びに補足を行った。具体的な研究成果は、次の2点に要約される。 1.正式な研究開発(R&D)組織の有無による差異分析論文より フォーマルなR&D組織を有している企業では、イノベーションの促進に影響を及ぼす重要な要因は、①クロス・ファンクショナル・チームを組成している、②ICTを利活用している、ことである。一方、フォーマルなR&D組織を有していない企業では、次の3点がイノベーションに重要な要因となる。①従業員に対するHRD(人的資源開発)プログラムを有している、②提案やQC活動に対する報奨制度を有している、③ISO9000シリーズへの対応が出来ている 2.企業への聴き取り調査論文より 中小企業では、イノベーション創出に向けてどのようなR&DとHRDが行われているのかを確認したところ、取扱製品・保有する技術シーズ・学習プロセスなど、個々の企業の強みを活かすような取り組みがなされており、多様性と奥深さが見出された。その一方で、イノベーション創出には、ISO9000シリーズへの対応を行うという共通点が確認された。前者は、データ解析では十分に捉えきれていない事項で今後の課題になるとともに、後者はデータ解析結果を追認するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ分析を重ねることで、29年度も一定の研究成果を上げる事が出来た。また、これに加え、28年度に実施したアンケート調査データと、過年度分のデータとのマッチングを行うことでパネルデータが完成した。この時系列(2期間)パネルデータを活用することで、環境要因や突発的な要因を除く、真のイノベーション創出要因の解析が可能となり、本研究テーマの最終目標の実現に近づく。現在、新たなパネルデータの分析作業を進めているところである。 パネルデータ分析としては、今回、2期間という最低限のデータしか収集できておらず、そのため期待する成果を導くことが困難なことも予想される。しかし、同分析に精通している方のご協力やアドバイスを得ることで、これに対処したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に実施したアンケート調査データと、過年度分のデータとのマッチングを行ったパネルデータという、2つのデータセットを保有することができた。今後、これらを活用した分析を進めることで、さらに研究内容を充実させることが出来ると考えている。 具体的には、①28年度のアンケート調査データを用いて、イノベーション促進要因の解析を行うことで、これまでの解析結果との比較検討を行う。②時系列のパネルデータ分析を行うことにより、景気変動などの外部要因を考慮した上で、イノベーション創出促進要因を解明する。
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Causes of Carryover |
平成30年度には、新たな分析結果に基づく学会発表の機会を得たいと考え、そのため29年度は海外学会への出張旅費を制限した。 平成30年度は、研究成果を海外の学会にて発表すべく、発表申込みを積極的に行い、機会を確保することで研究費を充当させて頂く予定である。
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Research Products
(10 results)