2014 Fiscal Year Research-status Report
効率性仮説と平穏仮説を統一的に説明できる理論の構築とその地方銀行への適用
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26380391
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
本間 哲志 富山大学, 経済学部, 教授 (60241775)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 効率性仮説 / 平穏仮説 / 一般化使用者収入モデル / 一般化使用者収入価格 / 動的費用効率性 / 競争度 / 効率性サイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究実施計画」に従い,今年度はHomma(2009,2012)によって提示された一般化使用者収入モデル(以下GURM)に基づき,「効率性仮説」と「平穏仮説」を統一的に説明できる理論の構築を試みた.具体的には以下の2つを主として行った. まず,通常の外生変数に加え,前期の市場集中度及び前期の費用効率性を所与として費用最小化を図る銀行を想定し,動的費用効率性を定義した.動的費用効率性は費用効率性の動学的性質を考慮できるだけでなく,上述の効率性仮説と平穏仮説を統一的に検証するための理論的基板をなすものである. 次に,GURMに基づき,フロンティア上で評価した一般化使用者収入価格(以下GURP)と同じくフロンティア上で評価した限界可変費用が等しいというGURMの基本性質を利用し,上述の効率性仮説と平穏仮説を理論的に定式化した.この定式化の重要性は以下の3つを明らかにした点にあり,次年度の実証分析の理論的基板を与えるものである.第1に,効率性仮説(もしくは平穏仮説)の成立には,フロンティア上のGURPと実際のGURPとの乖離に対する前期の動的費用効率性もしくは今期の金融財(もしくは前期の市場集中度)の影響,今期のGURPと限界可変費用との乖離に対する同様の影響,限界可変費用に対する同様の影響で評価した動的費用非効率性の3つが関係している.第2に,いくつかの無理のない仮定の下では,効率性仮説が成立することは,フロンティア上で評価した競争度が上昇するための十分条件もしくは必要条件である(ただし,必要十分条件ではない).また,平穏仮説が成立することは,上述の競争度が低下するための十分条件もしくは必要条件である(ただし,必要十分条件ではない).第3に,長期にわたり効率性仮説と平穏仮説が同時成立するならば,2期毎の動的費用効率性の間に循環的連鎖,すなわち,「効率性サイクル」が生じる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」にあるように,GURMに基づき,効率性仮説と平穏仮説を統一的に説明できる理論の骨格がほぼできあがったことが最大の理由である.また,次年度の実証分析のための理論的基板がほぼ固まり,何を推定し,何を明らかにしなければならないかという実証的課題が明確になったことももう1つの理由である.強いてマイナス点を述べるならば,効率性仮説と平穏仮説の同時検証方法の改善にまで踏み込めなかった点が挙げられる.根本的な改善の必要性も含めて次年度にあらためて検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は実証分析作業が中心となるため,今年度購入したワークステーション(Dell社製・Precision T7610)とデータ(日経メディアマーケティング(株)『NEEDS-CD ROM 日経金融財務データ(銀行・単独本決算)』,同『NEEDS-CD ROM 日経マクロ経済データ』)をフルに活用することを考える.最も労力を要するのはデータ作成作業であるが,ワークステーションでの作業を効率的に行うために,計量経済分析ソフトと表計算ソフトもしくは購入データに付属の利用ソフトとの連携を考える.また,ワークステーションのマルチコア及びマルチスレッドの性質を最大限に利用し,作業の同時並行化を劇的に進める.この同時並行化は推定作業に特に効果があり,同一モデルの異なる特定化での多数の推定を同時に行うことが可能である.さらに,ワークステーションの大容量メモリを利用し,通常のパソコンでは複数の段階を経てしか推定できないような比較的大きなモデル(複数の推定式からなるモデル)の同時推定を考える.具体的には,これまで別々に行っていた費用関数及びシェア方程式と確率的オイラー方程式の推定を同時に行うことを考える.これにより,推定の効率性が改善され,より統計的信頼性の高い推定値が得られることが期待される.
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