2015 Fiscal Year Research-status Report
効率性仮説と平穏仮説を統一的に説明できる理論の構築とその地方銀行への適用
Project/Area Number |
26380391
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
本間 哲志 富山大学, 経済学部, 教授 (60241775)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 地方銀行 / 効率性仮説 / 平穏仮説 / 静的費用効率性 / 動的費用効率性 / 資金運用純収益 / 成長拡大(収益規模重視)志向 / 営業経費最小化意欲 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から持ち越されていたHomma et al.(2012)の効率性仮説と平穏仮説の同時検証方法の改善を行うと共に,改善された方法を用いてわが国地方銀行の効率性仮説と平穏仮説の同時検証を行った.また,前年度に定義された動的費用効率性を推定し,Homma et al.(2012)で用いられた費用効率性(静的費用効率性)との比較を地方銀行について行った.推定の結果,得られた最も重要な知見は以下の通りである. 第1に,実質総金融資産で見た規模の大きい銀行ほど(静的及び動的)費用効率性が低い.資金運用収益から資金調達費用を差し引いた資金運用純収益の大きさは収益規模を重視した成長拡大志向の強さを表す一方で,営業経費最小化意欲にマイナスの影響を与えることがその原因である. 第2に,資金運用純収益を平均以上の水準にコントロールすれば,効率性仮説と平穏仮説が同時に成立する.資金運用純収益を平均以上の水準にコントロールするということは,考察対象の銀行を成長拡大志向が強く営業経費最小化意欲が低い銀行に限定する.こうした成長拡大志向の銀行では,なんらかの理由で成長拡大志向に伴うマイナス面が払拭され,競争上の優位性が増大するか劣位性が改善されるとそれを梃子に実質貸出もしくは実質総金融資産で見た銀行規模を増大させようとする.とりわけ,こうした銀行での費用効率性の改善は成長拡大志向に伴う営業経費最小化意欲の低下というマイナス面を払拭し,コスト面での劣位性を改善することになり,銀行規模の拡大につながりやすい(効率性仮説が成立する).こうした銀行規模の増大がある一定水準以上になると市場集中度が増大し,競争圧力が低下する.とりわけ成長拡大目的をある程度達成した銀行で顕著であり,その結果,こうした銀行では営業経費最小化意欲が元々低いことも影響して費用効率性が大きく低下する(平穏仮説が成立する).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資金運用純収益を明示的に用いることでHomma et al.(2012)の効率性仮説と平穏仮説の同時検証の方法を改善できたことが最大の理由である.また,改善された方法を用いてわが国地方銀行の効率性仮説と平穏仮説の同時検証を行い,前述のような重要な知見を得ることができたことももう一つの理由である.さらに進んで前年度に定義された動的費用効率性を推定し,Homma et al.(2012)で用いられた費用効率性(静的費用効率性)との比較を地方銀行について行ったことも理由に挙げられる.強いてマイナス点を述べるならば,前年度に構築された確率的オイラー方程式を含むモデルの推定までで踏み込めなかった点が挙げられる.前年度に構築されたモデルを十分検討しながら,次年度にあらためて推定する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も実証分析作業が中心となるため,前年度購入したワークステーション(Dell社製・Precision T7610)とデータ(日経メディアマーケティング(株)『NEEDS-CD ROM 日経金融財務データ(銀行・単独本決算)』,同『NEEDS-CD ROM 日経マクロ経済データ』)をフルに活用することを考える.ワークステーションの大容量メモリとマルチコア及びマルチスレッドの性質を最大限に利用し,これまで別々に行っていた費用関数及びシェア方程式と確率的オイラー方程式の推定を同時に行うことを考える.これにより,推定の効率性が改善され,より統計的信頼性の高い推定値が得られることが期待される.また,今年度の分析結果を研究会等で発表し,指摘された修正及び改善点等を次年度の推定に反映させる予定である.
|
Causes of Carryover |
予算の執行が年度末ぎりぎりまでかかり,実勢価格と実際の予算執行価格とのずれを調整できなかったため(次年度繰越額1,896円).
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越す金額1,896円は消耗品の購入に充てる予定である.
|