2015 Fiscal Year Research-status Report
相互行為の組織のための触覚的資源―身体接触を伴うコミュニケーションの会話分析
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26380654
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西阪 仰 千葉大学, 文学部, 教授 (80208173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 会話分析 / 相互行為 / 触覚 / 運動知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
データ収集に関しては,福島県において原発避難からの帰還住民のやりとりをいくつかビデオに収めた.身体接触の生じる場面は収録できなかった.しかし,触覚と直接かかわりのないものの,空間知覚,距離知覚など,身体運動知覚とかかわる現象が含まれているので,この点についての分析を次年度に期したい. 分析に関しては,すでに手元にあるデータの再分析を行ない,2つの論文を仕上げ英文専門誌に投稿した(一つは微修正を前提に採択され,もう一つは微修正要求の審査結果を得ている).一つの論文においては,在宅マッサージの施術者が患者に対して用いるインストラクションの分析を行なった.インストラクションの言語形式に「ください」「ましょう」「ます」という3つがある.それぞれの形式が用いられる施術全体における位置が異なること,および「ます」の下位区分である「(単純な)ます」と「いきます」が,それぞれの発せられるときの施術の進行状態の違いに感応的であることを示した.二つ目の論文においては,二つのインストラクション場面(産婦人科における看護師「逆子体操」の指導と演奏家による子どもへのバイオリンのレッスン)での身体を使ったデモンストレーションの分析を行なった.デモンストレーションの前提となる身体的構造の同型化が,発話,姿勢,身振り・手振り,身体接触の時間的・空間的配列により緻密に成し遂げられていることを示した.同時に,デモンストレーションを見ることが,視覚のみならず運動知覚とかかわることも,具体的に示すことができた.いずれも,新しい領域を切り開く研究と評価できる. また,この二つの論文のもとになった論考を,8月にそれぞれ,アメリカ社会学会における研究報告(アメリカ)と国際エスノメソドロジー・会話分析学会(デンマーク)における招待講演として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
身体接触を伴う相互行為のデータを収集することはできなかったものの,英文専門誌に論文を二つ投稿でき,審査において一定の評価を得ることができた点において,おおむね順調と判断できる.いずれの論文についても,匿名の審査者から,高い評価をえることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,最終年度なので,新たなデータの収集ではなく,分析および論文の執筆に力を注ぐ予定である.以前収集した身体接触を伴うやりとりのビデオの分析を進めるとともに,今年度収集したデータの分析をとおして,運動知覚・空間知覚と言葉のやりとりの関係についても,考察する. また,福島第一原子力発電所の爆発事故後,福島県内で継続的に行なわれている内部被ばく検査に関する医師と受検者のやりとり(昨年度収集したデータ)の分析結果をまとめた論考をアメリカ社会学会に投稿し,採択されている.2016年8月に発表予定である.(この論考では,不安の道徳性と検査結果の関連について論じた.身体接触を伴う場面を扱ったものではないが,機械との過去の接触が現在の不安の語り方を構造化している様子を分析した.)この論考は,報告後,論文としてまとめ,英文雑誌に投稿する予定である. 以上の作業をふまえ,最終報告をまとめていく.
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Causes of Carryover |
調査協力者・参加者との調整が年度末まで続き,調査旅行に出かける可能性があるために,一定額を残しておいたが,結局,調査計画がなくなり,その額が残った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度,昨年度の調査地に報告書を届ける必要があるため,そのための旅費として用いる予定である.
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] The structuring of the body in interaction2015
Author(s)
Aug Nishizaka
Organizer
The International Institute for Ethnomethodology and Conversation Analysis
Place of Presentation
University of Southern Denmark, Kolding, Denmark
Year and Date
2015-08-04 – 2015-08-07
Int'l Joint Research / Invited