2015 Fiscal Year Research-status Report
情報化時代における東アジアの相互理解のための価値意識・情報倫理の比較社会論的研究
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26380668
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
仲田 誠 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50172341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海後 宗男 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60281317)
佐藤 貢悦 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80187187)
石井 健一 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90193250)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 世間・運命 / ロボット倫理 / 供儀意識 / 深い社会意識 / 情報倫理 / 日本的価値観 / 東アジアの価値観 / 社会的共感 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は平成26年度中に実施した3つの調査のうち、日本での学生調査(首都圏の大学生362人が対象)、宮城・岩手・福島での被災地調査(25歳から44歳までの男女720人)の細かい分析を行い、その結果をもとに日本の情報社会の特徴について海外の学会や国内のワークショップで発表した。たとえば、日本学生意識調査データ分析の結果、以下のような点が明らかになった(これは被災地調査の結果とも一致する)。1)因子分析の手法を通じて、「世間・運命1(誠実・間人・運命)」、「世間・運命2(清貧・自然)」、「世間・運命3(無力感・自己中心主義批判)」という3つの「世間・運命観」に関する因子を得ることができた。2)この3つの因子は「社会的供儀意識」(「交通事故の現場などに花束が供えてあると被害者や被害者の家族の姿がはっきりと脳裏に浮かぶ」という意見への共感度や、「はかないものの美しさ」、「自己犠牲と人生」、「孤独死」の項目に関する共感度で図られる)とも相関性(統計的に有意な相関係数)を持つことが分かった。3)ロボットに関する回答を因子分析にかけ、「ロボット 1(ロボットの権利)」、「ロボット2 (人工生命体への共感)」、「ロボット 3(ロボット利用批判)」という3つの因子を得ることができた。4)ロボット因子は「供儀意識」と相関関係にあることがわかった。たとえば、「ロボット3」因子と「自己犠牲と人生」への共感度の間には.336(0.1%水準未満で有意)という相関係数が得られた。さらに平成27年度中には北京、上海、広州の3都市居住25歳以上44歳までの男女300人にインターネットで調査を実施した。質問項目は日本学生調査の内容に準ずるものであり、データは台湾学生の調査と合わせて現在分析中である。一部の分析は終わっており、「世間・運命観」に関して、日本の調査で見られた傾向が中国でも確認されており、非常に興味深い知見が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日中、台湾調査はすでに実施、日本調査に関しては主要な分析を終え、海外の学会等で得られた知見を発表している。中国本土調査も調査自体は無事終了し、一部の分析は終えている。ただ、中国の物価の上昇が著しく、当初予定していた以上の調査経費がかかってしまった。また、海外の出版社から依頼されたロボット倫理、情報倫理の共著論文の執筆に時間がかかり、韓国調査は一部の計画だけで平成27年度中の実施はできなかった。海外調査は経済状況の近年の変動で当初の予定どおりの予算、希望で調査を実施できないことも考えられる。その場合は、学生調査等に切り替えることも検討している。ただ、これも調査協力者等への依頼でかなりの費用がかかるかもしれない。質問項目等については現在研究会に所属する韓国出身の研究者等の協力を得て、検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査は昨今の経済状況の激変で調査の規模等を変更せざるをえない状況もでてきている。平成27年度に実施した中国調査は調査対象者数をしぼった上で、経費も上乗せしなければならなくなった。韓国調査も調査対象を学生などに変更する必要がでてくるかもしれないが、しかし、それでも、「世間・運命観」のアジア諸国の比較、またそれが情報社会に関する価値観とどう連動するかについての比較調査はこれまで実施されたことがないので、興味深い知見が得られることが期待できる。平成27年度実施の中国調査でも、「ロボットの権利への関心」、「ロボット利用に関する批判意識」というロボットに関する意識が、「社会的供儀意識」や「もののあわれ意識」などという社会的共感意識とかなり強い相関性をもつことがわかっており、きわめて興味深い知見が一部得られている。「表層」での価値観の違いはともあれ、「深層」レベルでは日中は社会的共感意識を共有しうるという知見は、今後の東アジアの情報社会比較、情報倫理比較を進める上で重要な知見になるはずである。
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Causes of Carryover |
平成27年度に中国本土でアンケート調査を実施したが、中国国内諸物価高騰、調査会社の請負費増加により、当初予定した額では調査が実施できなくなった。費用を増加し、サンプル数削減して実施したが、中国調査の実施費用が増加したため、平成27年度に予定していた他の地域・国での調査は同年度に同時に実施することはできなくなった。次年度一部計画を見直し、実施することにした。平成27年度実施予定の調査の一部を翌年度に実施することにしたので残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に実施していた調査を調査対象者を変更するか、調査に必要な額を見直すことで実施する予定である。
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