2016 Fiscal Year Research-status Report
情報化時代における東アジアの相互理解のための価値意識・情報倫理の比較社会論的研究
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26380668
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
仲田 誠 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50172341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海後 宗男 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60281317)
佐藤 貢悦 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80187187)
石井 健一 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90193250)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 世間・運命観 / 日本的価値観 / 東アジア的価値観 / 日中韓比較価値観 / 情報倫理 / ロボット倫理 / 情報社会の価値観 / 深層の価値観 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度前半は、韓国(ソウルと釜山在住の30~39歳の男女300名)で調査を実施し、平成28年度後半は日本の被災3県(福島、宮城、岩手、25~44歳男女600名)で調査を行った(この日本のデータは現在分析中)。平成28年度後半には平成27年度の韓国調査、平成27年度の中国調査、平成26年度実施の日本被災地調査、平成27年度実施の日本学生調査、平成26年度実施の台湾学生調査の結果を相互に比較し、報告書を日本語、英語の両言語で公表した。以下、日英論文で公開した知見のうち重要なポイントを示す。1)本研究代表者は、1981年の日本での「災害観調査」を皮切りに、継続して調査を行い、調査結果をもとに、「清貧の思想」、「自然との一体感」、「災害天譴論」などという価値観を含む「世間・運命観」について論じてきた。こうした「世間・運命観」は日本だけでなく、中国の人々にも広く共有されているものであることが本研究代表者の研究で明らかになっているが、今回の韓国調査でもこの点が確認された。たとえば、「人間は豊かになりすぎると堕落しがちなものだ」という「清貧の思想」への共感(「共感できる」、「ある程度共感できる」の合計)は中国、76.3%、韓国、67.3%、台湾学生、85.1%となっており、日本の数字(80.4%、平成26年度被災地調査)とかなり近い。「人のためにつくせばいつかは自分にプラスとなってかえってくるものだ(誠実重視)」という意見への共感度なども同様であり、東アジアでは多くの人がこの意見に共感している。2)「世間・運命観」が「ロボット倫理」や「プライバシー意識」とどう関連するかについては(日本ではこれらの項目間に関連性がある)、中国では日本と同様の傾向が見られ、韓国ではプライバシーに関しては同様の傾向が見られたが、ロボット倫理に関しては日中と異なる結果が得られた(現在さらに分析中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた調査の内、日本調査(学生調査も含めて複数回実施)、中国調査、台湾調査(ただし経費の関係で学生を対象に調査を行った)、韓国調査(平成28年度前半に一般成人を対象に調査を実施)は既に実施済みである。これらの調査の内、中国調査は、中国の物価の上昇が著しく、当初予定していた以上の調査経費がかかってしまい、その後の調査実施に支障をきたすのではないかと危惧されたが、幸いにも韓国調査で経費を予想以上に削減することができ、無事調査を修了した。 平成28年度実施の調査経費に関して節約できた費用を平成29年度に繰り越して、日中韓の価値観比較に関して追加分析経費として使用したいが、具体的には以下のような追加分析の内容を予定している。 韓国の場合は、日本や中国と違い、「自然からの遊離」と「清貧の思想」は「ロボット倫理」とほとんど関係がなく、一方、「個人主義」は「ロボット倫理」とかなり強いつながりをみせている、さらに「情実主義的価値観(知り合いを採用時などで優先する等の意識)」も「ロボット倫理」と強いつながりを見せている。また、中国や韓国では「個人主義」や「情実指向性」も「世間・運命観」とつながっていることが明らかになっているが、日本の学生調査ではこういう傾向は出ていない。さらに中国や韓国では、「情実指向」は「誠意重視」ともかかわっていたりする。こうした点に日中韓の価値観の違いが垣間見えるが、詳しい内容については、今後さらに聞き取り調査の結果などを合わせて分析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で実施した調査のうち、日本を対象とした調査結果から明らかになっているのは、「世間・運命観」はただの古臭い合理性のない考えではなく、生活への積極的な指向性、批判的意識、より良い人生に関する「構え」とも関連している点である。本研究代表者らが平成18年に福井と東京で実施した原発の不安感に関する調査では、「世間・運命観」は、「環境にやさしい生活への指向性」などとも連動して原発不安感にかかわっている。また、原発への不安は、環境問題、その他食の安全問題などとセットで存在している。これはまた全体として「世間・運命観」と関連性をもつ。あるいは、原発問題や環境問題、その他食の安全問題などへの「構え」が「世間・運命観」に反映されているともいえる。以下仮説であるが、「構え」とは、「より良い人生への課題」として物事を自己のものとして受けとめようとする姿勢なのではないか。そこには社会問題や技術への姿勢も含まれる。この「構え」やそれとかかわる視点は人生に対する鳥瞰図のような見方を可能にするものではないか。日本の調査結果の分析(平成26年調査など)では、主因子法の分析によって得られたプロット図の分析等を通じて、「世間・運命観」が一種の鳥瞰図的視線を可能にする(と思われる)位置を占めることが明らかになっているが、興味深いことにこの位置には、「ロボット倫理」などの項目や「もののあわれ」的価値観も位置することがわかっている。情報社会の価値観の構造を考える上でこうした知見は重要なものだが、中国や韓国でも同様な知見が得らえるのか、今後補足的なデータなども参考にして、プロット図を描いたり、あるいは聞き取り調査などの結果を参照しながら分析したい。
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Causes of Carryover |
平成28年度実施の調査に関して、調査項目を一部変更し、委託する調査会社を見直ししたところ、調査実施経費を節約できた。この費用をもとに、「①中国、韓国では、「世間・運命観」と「個人主義」、「情実主義」が連動しているが、日本ではそうではない」「②韓国ではロボット倫理と情実主義が連動している」の2点について資料の分析、インタビュー等により、追加分析する。また、その追加分析の結果を含めて、学会報告も行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「①中国、韓国では、「世間・運命観」と「個人主義」、「情実主義」が連動しているが、日本ではそうではない」「②韓国ではロボット倫理と情実主義が連動している」の2点について資料の分析、インタビュー等により、追加分析する。また、その追加分析の結果を含めて、学会報告も行う。
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Research Products
(9 results)