2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380671
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
安藤 孝敏 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (00202789)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 被援助志向性 / 援助拒否 / 社会的孤立 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、周囲からの支援を頑なに拒否する、いわゆる援助拒否の姿勢を取りながら地域で生活を続ける高齢者への支援方略を検討することが目的である。 平成26年度は、第一の目的である、日常生活場面において高齢者が持つ「援助を受けること」に対する認知的枠組み-被援助志向性を明らかにする尺度を作成し、その信頼性及び妥当性を検討した。最初に、既存尺度である被援助指向性尺度について、高齢者支援団体などへの聞き取り調査を行い、尺度項目の内容を精査した。その結果、既存尺度には含まれていなかった行政機関などによるフォーマル・サポートに対しての志向性を取り入れて被援助志向性尺度の改訂版を作成した。次に、この尺度の信頼性および妥当性を検討するために、都市部在住の65歳~79歳の一人暮らし高齢者1680名を対象に、郵送法による質問紙調査を実施した。調査では、基本属性に加えて、社会関係に関する項目、支援・サービスの受領に関する項目、孤独感尺度、健康度自己評価、老研式活動能力指標などの心身の健康度に関する項目、改訂版援助志向性尺度などを尋ねた。葉書による回答の督促により、687名から回答(回収率40.9%)が得られた。 改訂版援助志向性尺度12項目について因子分析を行ったところ、想定通りの4因子(「インフォーマル・サポートへの欲求」α=.83、「フォーマル・サポートへの欲求」α=.81、「インフォーマル・サポートの授受関係に対する抵抗感」α=.65、「フォーマル・サポートの授受関係に対する抵抗感」α=.65)が抽出され、因子的妥当性と一定程度以上の信頼性が確認できた。基本属性との関連について検討した結果、いずれのサポートに対しても女性より男性で抵抗感が高かった。また、健康度の自己評価が低い者ほどフォーマル・サポートへの欲求が高く、その一方で、インフォーマル・サポートの授受関係への抵抗感が高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初の予定どおりに、被援助志向性尺度の改訂版を作成し、一人暮らし高齢者を対象とする大規模質問紙調査により、改訂版尺度の妥当性および信頼性が確認できた。また、調査では日常生活における支援・サービスの受領および希望も尋ねたので、この点からも改訂版尺度の妥当性の検証が可能になった。これらの成果から、第一の目的がほぼ達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度において実施した調査データの分析を引き続き行い、新たに作成した改訂版被援助志向性尺度の信頼性および妥当性を詳細に検討するとともに、被援助志向性と心理・社会的特性との関連、被援助志向性と支援・サービスの受領との関係についても明らかにする。これまでに得られた成果は、国際老年学会アジア・オセアニア地域会議にて報告する。 平成28年度の調査に向けて、横浜市内18区の基礎的な情報を収集し、小規模調査を実施する候補地域を選定する。大規模質問紙調査の結果を踏まえて、支援・サービスの内容についてのチェックリスト作成などの小規模調査の準備を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度に研究費の残額が生じ、次年度使用することになったが、これは大規模質問紙調査が予定よりも安価な委託費で実施できたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の小規模調査の準備および実施(回収率を高くするための工夫)に充当する予定である。
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