2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380702
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡辺 芳 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (70459832)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会的排除 / ホームレス / 迷惑施設コンフリクト / ライフコース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成16~21年に川崎市に設置された一時宿泊施設・愛生寮の利用者記録から、野宿者を含む生活困窮者の生活歴に関する実証研究である。施設利用者の生活の型を析出して、なぜ生活困窮状態へと至ったか分析を行った。研究方法は、利用者台帳の分析、文献調査である。利用者を種別ごとに、越年事業利用者、緊急宿泊利用者、通年宿泊利用者にわけて、それぞれ年齢、職歴、家族構成、ホームレス化要因、社会福祉サービスの利用状況などをとりあげた。
本年度の研究実績の公表は、平成19・20年の越年事業利用者について、日本社会学会で報告を行った。分析成果は、以下の通りである。①建築土木業を直前職・最長職とする中高年男性で、婚姻歴がなく、義務教育修了・高校中退者が多数を占める。出身地(本籍地)は、北海道・東北、関東、沖縄がそれぞれ約2割を占める。移動歴はは東日本または沖縄から、首都圏に移動をして定着した者と、首都圏を移動をしない者とに分けられる。最後の住民登録地は神奈川県内(特に川崎・横浜)である。直前の住居は、労働住宅が過半数を占める。②野宿形態は、駅や公共施設に寝泊まりする移動層がほとんどであり、河川敷に定住層は利用しにくい。③野宿継続者(特に野宿10年以上)は、野宿継続指向、就労自立志向が強い。この両者は野宿年数を重ねるごとに混在する。また、施設を利用しながらの野宿指向の強さがうかがえる。④新規流入者(野宿1年以内)は、就労自立志向と制度利用指向が強い。ただし、平成19年のデータでは、健康状態が不調を訴える者が野宿3年以内に多いため、それが影響している可能性もある。
本研究の意義は、2000年代の生活困窮者の生活実態を把握できる大量の利用者記録をもとにして、その生活履歴の類型化を目指し、現代日本の貧困の実態をつかむことが出来る点にある。またそこから脱却するための要因についても考察を深めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査協力をお願いした関係法人の事業再編に伴い、協力施設の事業終了をした。そのため、実際の作業を実施する会議室等が利用できなくなったため、予定していた日程での調査を行うことが難しくなった。その他に、利用者台帳の閲覧と入力について、利用者台帳から直接データ入力をするように制限が付いたため、データ入力作業の進度が遅くなってしまった。平成27年度は、協力法人との連携を密にとり、引き続き、入力作業を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、利用者台帳の閲覧と入力について、数人の作業補助者を雇用して実施する予定である。作業の省力化を行うために、利用者台帳の複写について、協力法人への依頼を継続する。また、利用者台帳の分析にあたっては、当時の施設関係者や関連機関からのヒアリングが必須である。そのため、インタビュー調査の実施を進めていくことにしたい。
調査結果の中間報告については、学会報告と投稿論文への執筆を通じて、外部公表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、調査開始年度であり、利用者台帳を管理する法人との調査協力体制の構築を主軸とした。そのため、利用者台帳の閲覧と入力については若干の制限があった。そのため、研究代表者による作業が中心となったため、作業進度が遅くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、調査協力法人との関係維持を重視しつつ、作業補助者を雇用して、作業のアウトソーシングを検討している。協力法人の同意が必要であるため、研究代表者の意向のみで作業を進めることは難しいが、個人情報の保護に留意しつつ、効率的に研究を進めたい。
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