2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380702
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡辺 芳 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (70459832)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 野宿者/ホームレス / 不安定居住 / 生活保護 / 制度の谷間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な実績は2点ある。第1点目は、川崎市の一時宿泊施設を利用したホームレスのうち、入所面接を経て施設利用に至った、川崎市駅周辺に居住したグループ(「入寮者」)に関する統計分析を行ったことである。「入寮者」のなかから、自立意欲が高いと判断されたグループ(男性213名)について、分析を行った。出身地は、川崎・東京を中心とする関東地方、九州・沖縄地方のグループに二極化していた。学歴は中学校卒業が5割、未婚者が6割である。職業は、直前職が土木・建築業が4割、製造業が1割を占めていた。家族とのネットワークについてみると、音信がない期間が20年以上が約5割であった。退寮後の生活希望は、アパート生活希望が6割を占めるものの、無回答が2割弱がいたことが特徴的である。 次に、野宿直前の居住形態別(「安定住宅」、「労働住宅」、「不安定住宅」に分類)に、分析を行った。「労働住宅」と「不安定住宅」は特に未婚者が多かった(「安定住宅」45.6%、「労働住宅」69.4%、「不安定住宅」)57.7%)。支援制度の利用状況についても、「不安定住居」は生活保護制度や川崎市の支援制度利用率が高かった。野宿を経て施設利用に至る以前から、支援を必要としていた人々が、問題解決をせずにいたことがうかがえた。この分析結果は、2016年度の日本社会学会にて報告を行った。 第2点目は、緊急利用をしたグループ(「緊急宿泊」)について、データの入力とその分析を行ったことである。「緊急宿泊」は、川崎市の全域から、福祉事務所、支援団体、病院を経由して、利用に至っている。「緊急宿泊」後に、入所面接を経て正式利用に至った者もいるが、その多くは、利用者の課題内容に応じて、アルコール依存症施設、婦人施設、グループホームへの入所、年金支給の再開、生活保護の受給へと結びついている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
施設利用者の記録については、デジタル化を終えた。今後は、データの分析と関係資料の収集と読み込み、関係者へのヒアリングを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「入寮者」(自立意欲の高い者)「入寮者」(自立意欲の低い者)「緊急宿泊」に分類をして、それぞれの比較検討を行う。2000年代の野宿者をめぐる社会状況を踏まえた分析を行うことにしたい。野宿者の比較分析の結果については、学会報告と論文執筆を行い、外部への公表を積極的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
2017年2月に業務委託を行った。その精算が終わっていないため、次年度使用額が生じている。研究自体は順調ではあるが、業務の内容や分担については、見直す必要があると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
業務委託をさらにすすめ、研究代表者は分析と考察に専念をするようにしたい。
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