2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380735
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
森谷 康文 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50455698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 恭子 文教大学, 人間科学部, 准教授 (10331547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 難民 / ソーシャル・キャピタル / 社会統合 / エスニック・コミュニティ / トラウマ体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、難民の移住国(地域)における社会適応や統合の促進の背景をソーシャル・キャピタルの構成要素を基軸に分析し、各要素の関係性や情勢される背景について整理することにある。2015年度は、日本で暮らす難民とオーストラリアの難民支援団体と難民当時者への聞き取り調査をおこなった。 日本で暮らす難民については、難民コミュニティのリーダーを中心に聞き取りをおこない、コミュニティがメンバーに提供する支援やメンバーが求められるコニュニティへの貢献について整理した。さらに同国出身者によるコミュニティがない難民が日本社会でどのようなつながりをもっており、そこから何を得られており、また同族コミュニティとの相違点についても整理をおこなっている。 オーストラリアでは、3月9日から3月24日まで、昨年も訪問した難民支援NPOを中心に、難民支援の実際をコミュニティ支援を中心に聞き取りと参与観察をおこなった。コミュニティ支援への同行では、コミュニティメンバーと支援団体からの聞き取りを行い、難民支援におけるコミュニティがソーシャル・キャピタルの要素とどのような関連性があるのかを整理した。とりわけ、今回の調査では就労機会あるいは子どもにおいては教育機会の獲得、権利擁護などの活動がコミュニティの中心的な役割になっていることが確認できた。支援団体のスタッフへの聞き取りにおいて、難民の紛争や迫害のトラウマ体験により影響が、本人はもちろん家族やコミュニティへも影響する事例を聞くことができ、今後の考察を深める重要な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までに課題となっていた、難民の社会統合にソーシャルキャピタルの取り扱いについて、一定の整理がおこなえた。また、オーストラリを事例に、移民政策におけるエスニックコミュニティの取り扱いが与える難民をとりまく環境におけるソーシャルキャピタルがどのような影響を受けるかについて、文献整理をおこなうことができた。さらに、オーストラリアにおいて移民政策がコミュニティにどのような影響を与えているのかを政府文書を中心に整理した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における難民の社会統合において、ソーシャルキャピタルがどのように形成され、何が不足しているのかを整理したい。オーストラリアの難民支援を参考にエスニッックコミュニティ及びホスト社会における難民に関連するソーシャルキャピタルの現状を整理し課題を明らかにすることで、今後の難民支援の方向性を示唆したい。
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Causes of Carryover |
海外調査において、昨年と同様にオーストラリアを選択したことで、渡航費の削減ができたこと、及び調査を予定していたエスニックコミュニティが英語での調査が可能であったこと、通訳が不要だったことから計画予算よりも少ない出費に抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
エスニックコミュニティへの支援のあり方をより詳細に把握するために、オーストラリアへの再訪問に使用した。また、調査の社会への還元として、オーストラリアの難民支援団体のスタッフを招いて実践報告をおこない、日本のソーシャルワーカーの難民支援を学ぶ機会と経験交流の場の設定も検討したい。
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