2015 Fiscal Year Research-status Report
行政・社会福祉法人と連携した生活困窮者支援策の開発・推進に関する実証的研究
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26380740
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
椋野 美智子 大分大学, 大学院福祉社会科学研究科, 客員研究員 (90307976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姫野 由香 大分大学, 工学部, 助教 (10325699)
垣田 裕介 大分大学, 大学院福祉社会科学研究科, 准教授 (20381030)
廣野 俊輔 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (60626232)
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 教授 (80159441)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域の多様なパートナーとの連携 / 社会福祉法人の地域貢献 / 障害者就労支援施設のノウハウ活用 / 任意事業と市町村の共同委託 / 求人開拓と商工部局との連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.調査 ①大分県社会福祉協議会から生活困窮者自立支援事業実施のための県内市町村への支援状況及び県内の地域における様々なパートナーとの連携状況について聞き取り調査を行った。さらに、具体的な本事業における社会福祉法人との連携事例として、②佐伯市社会福祉協議会における支援の状況と社会福祉施設との連携状況及び③一時生活支援事業の受け皿として社会福祉法人が新たに設置した無料定額宿泊施設について聞き取り調査を行った。また、④京都府及び栃木県の就労支援関係者並びに大阪府内自治体の調査を実施した研究者を招いて報告を聴取した。そのほか、⑤英国バートンにおける生活困窮者の支援について既存資料を収集した。 2.分析 ①社会福祉法人については社会福祉法の改正などを背景に、県内の経営者協議会が推進母体となって、自立支援のための就労の受け入れ、基金の拠出、相談事業の実施について協力が得られたことが明らかになった。②一方、一般の住民の間には生活困窮者の支援に対する厳しい見方が根強く、就労の受け入れについても民間近業は限られていることが明らかになった。このことから、③生活困窮者の実態について一般の住民や企業の理解を得る方策を進めるとともに、④民間企業の求人の開拓については、実例の積み重ねによる見える化と、自治体の商工部局などを通した働きかけが必要であることが示唆された。また、障害者就労支援施設との連携によるノウハウの活用が有効であることも示唆された。⑤支援困難事例としてギャンブル依存症があり、保健医療の専門職との連携の不足が明らかとなった。⑥一時生活支援や学習支援などの任意事業について実施自治が少なく、その理由として、必要性の理解の不足とともに、一市町村では委託先がない、掘り起こせたニーズ量が少ないなどの問題があること、その解決のために複数市町村共同での委託などの必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.多分野の研究者による研究組織を設置し、大分県内において調査を行った。 2.実態について①母子家庭で子どもが高校中退で非正規就労となっているケース ②祖父母の老齢年金で一家が暮らしているケース ③ひきこもりのケース④精神や知的障害が疑われるケース、⑤ギャンブル依存が疑われるケースなどが明らかになった。 3.課題について、就労支援は①ハローワークの活用とともに、そこに出ていない求人ニーズを開拓すること ②一般就労であっても何らかの支援が必要な場合が多いこと、③通勤への対応が必要であること ④障害があるにもかかわらず手帳を取得しないままで大人になった者への対応の難しさ、家計支援は、⑤知的障害など相談が成り立たない者の存在 ⑥自炊ができないことが費用だけでなく栄養上も問題であること ⑦介護費用や医療費などが継続的にかかると自立が難しく別途の対応が必要であること、⑧ギャンブル依存症などではまずその治療が必要であること、予防の観点からは、⑧ひきこもりについて軽度の段階での積極的掘り起こしと支援が重要であることが明らかになった。 4、解決法策について、地域での連携が必要であり、①社会福祉法人の地域貢献としての協力、特に就労支援については障害者就労支援施設のノウハウ活用、②商工部局との連携による民間企業での求人開拓、③実施自治体の少ない任意事業の推進方策としての市町村連携、④そのためのソーシャルワークと制度見直しが必要であることが明らかになった。 5.このように大分県内の調査と分析は順調に進展しているが、一方、英国オックスフォード市バートンについての調査は現地とのスケジュールが27年度中に調整できずインタビューが実施できなかったため、計画より遅れている。したがって、全体としてもやや遅れているとの評価が適当である
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施した臼杵市、日出町及び佐伯市等での調査の経過を追うとともに、既存資料及び関係者からのインタビューにより国内他地域における状況について調査を行い、事業実施の成果と課題の析出を深める。 英国オックスフォード市バートン地区での生活困窮者の支援策と制度について既存資料の収集整理を進め、関係者のインタビューを行い、都市計画、コミュニティ開発の観点も含め、成果と課題を析出する。 以上を基に、生活困窮者支援策の新たな開発及び既存施策の推進方策についてまとめる。さらに、具体的支援策を支える制度の体系的改善を、特に障害者支援施策、引きこもり等若者支援施策、子ども・子育て支援制度、ひとり親等支援施策、まちづくり施策(都市計画、コミュニティ開発)などとの連携強化を視野に、まとめる。
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Causes of Carryover |
分担研究者が所属する学内組織の再編と新学部発足のための準備等により、英国オックスフォード大学の研究協力者とのスケジュールが27年度中に調整できず、オックスフォード市バートン地区での現地調査が次年度に延期されたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内調査及び英国オックスフォード市での現地調査を行う。 研究会及び成果報告会を行う。
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