2015 Fiscal Year Research-status Report
母子支援に焦点を当てたファミリーソシャルワークの事象的検証法
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26380769
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
稲垣 美加子 淑徳大学, 社会学部, 教授 (30318688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 万由美 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (70308104)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 母子生活支援施設の支援課題 / 家族支援の課題 / ファミリーソ-シャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の過程において、関東近県の母子生活支援施設の協力を得て支援困難事例の収集、分析を行った。この分析結果は本研究の一部としても有効なデータであるだけでなく、事例を提供してくださった当該施設にとっても有効な示唆が確認された。 そこで、分析結果をグランデッド・セオリーを用いて質的に解析した途中経過を関係施設の検討会等でフィードバックし、アクセルコーディングを試みるとともに、実践現場からの課題提起、解決の方途の方向性について意見を得た。 分析結果からは、ドメスティック・バイオレンス(以下DV)を体験した家族の中に生じる児童虐待や家庭内暴力への対応とハードの個室化の矛盾に苦しむ現場の実情が浮かび上がった。これに加えて、離れて暮らす子の父は母にとって暴力の加害者であり、単なる家族関係の調整といった従来の介入方法では“支援困難”となる状況も確認された。さらに、制度・施策的に多機能化を求められる母子生活支援施設の本来業務の中に課題の深刻化、支援ストックの不足が確認され、制度・施策の求める多機能化がより一層支援の困難を深めているのではないかと複合要因が確認された。被災地の家族については復興支援の遅れとも相まって、聞き取りが2ケースにとどまっており至急の課題となっている。しかし、この2ケースからも離れて暮らすうちに心理的な距離が相互理解の困難や生活観の相違を生み出し、家族自身が苦悩する様子が確認されており、ここにも、従来の家族関係の調整を超えた“支援困難”な課題が散見された。 これらのケースはDV,被災と経過は異なるものの、離れて暮らさざる負えない要因を抱えた家族の関係調整や、課題をふまえた家族統合に、単なる家族関係の調整ではなく、介入を必要とする課題のアセスメントが必用であり、また、家族特性や社会との相互作用を踏まえたファミリーソーシャルワークの必要性が確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被災地のケースの聞き取りについて、既述のように復興支援の遅れから調整を依頼していた機関職員による調整に時間を要し、結果として複数県において訪問、聞き取り調整がかなわないままとなった。さらに年度末・初めの職員の移動に際し引継ぎがうまくいかず、調査協力の依頼、訪問日時の再設定が必要な状況となり、大学教員の春季休暇を利用してのフィールドワークの実施が困難となった。 現在、再度調査協力の依頼をし、一県では具体的にインタビュー計画も立っている状況。今後も積極的に調整を依頼し、可能な限り当初の計画どおり、支援方法の試案作成へと移行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度にあたり、収集・分析経過にある関東近県の母子生活支援施設の支援困難ケースについての分析をさらに進め、グラウンデッド・セオリーを用いて現場密着型の理論構築を試みる。この理論生成の成果物として支援ガイドラインを作成し公開したいと考えている。できれば、夏までに仮のガイドラインを作成し、今回調査に協力してくれた母子生活支援施設に再度協力を依頼し、研究成果の再現可能性の論証を試みたい。 さらに、成果をブックレットとして公開することにより汎用化を検討している。これにあたっては、従来から協力を得ている関東ブロック母子生活支援施設協議会の研修部会の協力を得て、研修教材としての活用を企図していきたい。また、研究成果の一部を学会、研究誌等に公開するべくエントリーをしている。 そして今回の研究のエビデンスから、さらに研究の発展性が示唆される。そこで、最終年度の研究を進めつつ、その成果を基礎データとして、継続研究を企画し当該研究助成に応募してていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
特に被災地ケースのデータについて、調整機関との連絡の齟齬があり、ケース取集が遅れ、結果として研究の遅延にいたり、これに関連する経費が未使用となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
至急、ケースの聞き取り等研究の進展を図るとともに、聞き取り結果の文章化などの経費を消化する予定。併せて、分析経過、結果についてスーパーバイザーの助言を得る予定。
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Research Products
(1 results)