2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380770
|
Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
岩井 阿礼 淑徳大学, 総合福祉学部, 准教授 (50348348)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 範子 上智大学, 経済学部, 教授 (50286134)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 障害者就労支援 / 工賃向上 / ICT / 倫理的消費 / 援助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度までに岩井と新井が共同で行ったインタビュー調査やインターネット調査をもとに、授産製品の販売におけるICT利用形態の概要をまとめ、日本社会福祉学会に報告した。授産製品の販売におけるICT利用形態は多様であり、福祉サービス検索サイトへの登録なども含めればICTを利用していない事業所はほとんどないと言えるほどである。報告ではICTの利用形態を8つの類型に分類し、類型ごとの特徴を分析した。また、ICTを経由した情報拡散がきっかけとなって売り上げを伸ばしたケースについても言及し、「事業者が意図しない拡散」が関与していたことを示した。 新井は著作においてインターネットの「口コミサイト」で高い評価を得たことをきっかけに販売が拡大した事業所を取り上げ、顧客に「何かしてあげたい」という気持ちを起こさせ、顧客が「応援団」として能動的に関与している企業のダイナミズムを分析した。 次に、授産製品購入という行為の性質を同定するため、岩井は授産製品購入と援助規範意識、情緒的共感性、倫理的購入に対するとの関係について質問紙調査の分析を行い、その結果を日本社会心理学会に発表した。援助規範意識が高得点であるグループは、倫理的消費に対する態度が有意に肯定的であり、援助規範意識の下位尺度である自己犠牲規範および弱者救済規範でも同様な結果となった。情緒的共感性については有意差がなかった。また、授産製品を購入した経験のある者と購入経験のない者で比較すると、購入経験者は購入未経験者にくらべ、倫理的消費に対する態度が有意に肯定的であることがわかった。授産製品を購入するという行為は、援助規範意識に支えられた倫理的購入としての側面を持つと推測できると言えるだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の体調不良と近親者が介護支援の必要な状態にあることに加え、研究分担者にも健康問題が発生したため、研究が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究で、ICTを用いた授産製品の販売を成功裏に進めている企業は少ないということが分かった。 しかし、現在までの研究からは、限定されたコミュニティに向けて、ICTを用いた広報活動を行うことには一定の有効性があるのではないかという仮説を立てることが可能である。というのは、授産製品を購入したことのない回答者が「購入しなかった理由」としてもっとも強く選択したのが、購入することを「思いつかなかった」、「販売日や販売場所を知らなかった」というものであり、また購入経験者も購入の理由として「偶然、販売場所を通りかかった」ということを一定の割合で選択しているからである。その事業所の販売場所の近辺のコミュニティ・メンバーに対して、広報活動によって授産製品の販売を行っていることや、販売の日時や場所等の情報を周知することができれば、「今日が販売日であることを知る」「購入を思いつく」人が増え、販売を促進できる可能性がある。この可能性を検証するため、福祉施設の協力を得て、広報用SNSのアカウントを作成し、広報活動の影響の有無を測定するアクションリサーチを行う。 ECサイトでの授産製品販売については、「生活者がインターネット経由で商品を購入することを思い立ち、実際に商品を購入する」までのプロセスのどの部分に問題があるのかを、質問紙調査等の手法を用いて明らかにしていきたいと考える。 また、「高い工賃を実現している事業所」のICT利用の状況という視点を加え、ケーススタディを継続して行う。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究の遅れにより、予算を要するいくつかの調査が、最終年度に持ち越されたことによる。 次年度に、SNSによるエリア限定広報活動の効果測定、授産製品購入の意思決定過程調査、ケーススタディを行い、報告書を作成する経費として使用する。
|