2015 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設で家族支援に用いるリスクマネージメントモデルの検証と普及
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26380780
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Research Institution | Japan Lutheran College |
Principal Investigator |
加藤 純 ルーテル学院大学, 総合人間学部, 教授 (80247105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 茂明 目白大学, 人間学部, 教授 (20236813)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 児童福祉 / 児童養護施設 / ファミリーソーシャルワーク / リスク・アセスメント / 家族再統合 / 家庭支援専門相談員 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、児童養護施設に入所している子どもの安全を確保しつつ親子関係の再形成を支援する際に必要なリスクマネージメントの方法について実証的に研究することを目的としている。2016年度は、主として3つの研究活動を進めた。 第一に、施設外で複数の家庭支援専門相談員に参加してもらう方法での研修会を2回実施できた。いずれも一泊二日の研修である。うち1回は、外部団体が主催する研修会で、ビクトリア州で開発されたリスク・マネージメント・モデルを紹介し、事例を検討した。他の1回は、当該科研費を用いて開催した研修会で、ビクトリア州のリスク・マネージメント・モデル改訂版と厚生労働省が提唱しているチェックリストとを併用して事例を検討した。参加者からのフィードバックにより、ビクトリア州モデルと厚生労働省チェックリストの利点と課題点が明確になり、両者を併用することの有効性が示唆された。 第二に、東京都内の児童養護施設職員数名が参加する研究会を定例的に開催し、施設から家庭復帰した子どもの再虐待や再保護のリスクを低減するためのアフターケア計画の策定方法について先進的な施設の実践例を踏まえて検討した。 第三に、近県の児童養護施設の家庭支援専門相談員の部会に年間5回参加し、入所前の情報収集、入所中の親子交流場面での情報収集に用いるアセスメント・シートの作成過程を参与観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請した当初の計画に記した児童養護施設内でリスク・マネージメント・モデルを試行することはできなかったが、施設外で複数の家庭支援専門相談員に参加してもらう方法での研修会を開催できた。リスク・マネージメント・モデルを学ぶためのテキストも試作し、研修会で用いて、フィードバックを得られた。当初の予定とは異なる方法ではあったが、成果は2015年度末に予定した以上に得られている。 都内の児童養護施設が参加した研究会ではアフターケアに関する様々な課題を論じられた。ただし、リスク・マネージメントと直結する課題以外にも論点が広がった。内容面で少し遅れがあると考えられる。 近県での児童養護施設・家庭支援専門相談員部会では、児童養護施設での家族再統合過程に用いるアセスメント・シートの作成が年度内にほぼ完成に近づいた。リスクという視点は前面に出されていないが、施設職員が家族に関する情報を収集し、整理し、判断する過程を体系化できたことから、計画に近いペースで進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ビクトリア州のリスク・マネージメント・モデルを日本の児童養護施設の現状に合わせて改訂するための研究活動を継続する。具体的には、児童養護施設の家庭支援専門相談員を対象とした研修会を2016年度中にさらに2回実施し、ビクトリア州のモデルの改訂版を含めたリスク・マネージメントに関するテキストを用いて、修正意見を得る。また、研修会参加者を対象とするフォローアップ研修を開催し、施設で活用した結果に基づくモデルに対する修正意見を得る。研修会の成果を踏まえて、ビクトリア州のリスク・マネージメント・モデルと国内の児童相談所や児童養護施設ですでに活用例があるチェックリストとを組み合わせて家庭復帰時のリスク・アセスメントをして、アフターケア計画書の作成する支援過程を体系化したテキストを作成する。 都内の児童養護施設の職員が参加する研究会では、家庭復帰後のリスクの変化を把握するために子どもや家庭の状況を把握する方法と、把握した情報に基づきリスクを測定する方法について討議する。 近県での児童養護施設・家庭支援専門相談員部会では、2015年度までにほぼ完成したアセスメント・シートを、2016年度は活用して修正を加えることが計画されている。年6回の会合の参与観察を通して、家族再統合過程での一般的なアセスメントにリスクの視点を採り入れる可能性を探り、リスク・マネージメント・モデルを普及へとつなげる。
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Causes of Carryover |
リスク・マネージメント・モデル研修会を公的機関で開催した結果、予算より少ない経費で実施できたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
リスク・マネージメント・モデル研修会のフォローアップ研修会を研究計画に加える。
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