2015 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルワークの価値の可視化と習得-ワーカーの認識成長プロセスの解明-
Project/Area Number |
26380800
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
大谷 京子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (90434612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 和彦 日本福祉大学, その他, 専任教員 (10440801)
吉田 みゆき 同朋大学, 社会福祉学部, 准教授 (70445930)
寺澤 法弘 日本福祉大学, 社会福祉学部, 助教 (80548636)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソーシャルワークアセスメントスキル / 経年インタビュー調査 / 質的データ分析 / 成長プロセス / 研修プログラム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルワーカーの「自己規定」と「対象者観」が、専門的価値をあらわす概念であるという前提を検証するために、先行研究レビューを行った。その結果、専門職アイデンティティが、専門的価値を実現・実行するための基礎になるものであるがため、自己規定は価値実践を可視化して捉えるための指標たりうることが明らかになった。対象者観についての論考は途上であり、これらをまとめて本研究の理論的枠組みとする予定である。 精神福祉士養成課程卒業生13名(退職したため昨年度より1名減)の経年インタビュー調査の2回目を実施し、逐語記録に起こした。3年分の蓄積を待たずに、1回目の14名分データを分析し、実践に入る前のPSW0年生の認識の特徴を明らかにした。この結果から、養成課程教育において重視すべきことについての提言を行う論文を現在執筆中である。また、実践を1年経験した卒業生たちの役割認識の特徴も捉えられた。特筆すべきは、個別支援に偏重するようになったこと、不安は言及されなくなったが不満を抱えていること、個々の認識には実体験が伴うようになったことが大きな特徴である。詳細な分析は今年度の課題である。 4つの精神保健福祉士協会都道府県支部の協力を得て、アセスメントスキル評価指標開発のための質問紙調査を実施した。一定の信頼性・妥当性を担保した尺度を作成できたので、学会誌に投稿した。さらにアセスメントスキル向上のための研修プログラムを2回実施し、前後比較データを取った。さらに3か月後の比較のため、調査票を配布しているので、今年度回収予定である。これらのプログラム評価を基に、これまで改良を重ねてきた研修プログラムについてもエビデンスが得られると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソーシャルワーカーの認識成長の促進要因と阻害要因を明らかにするための、エキスパートインタビュー調査については、全く進めることができなかった。ここが遅れることで、2つの質的調査結果を統合して可能になる質問紙調査とガイドブックの作成に着手できなかった。 成果としては、以下の3点があげられる。 1.ソーシャルワークアセスメントプロセスを遂行するために必要なスキルは、行為と思考の両方にまたがっていることがあきらかになり、これについての評価指標は開発することができた。そこで今回は、そうした行為と思考の両面を支える価値に焦点を合わせた。「自己規定」と「対象者観」というソーシャルワーカーの認識が、専門的価値を現すツールになるという前提を置いてきたが、先行研究レビューにより、専門職アイデンティティという概念を用いて、その関係性を明確にし、理論枠組みを構築しつつある。 2.アセスメントスキルについては、全般的な研修を受講するだけでは向上できないことが明らかになったので、アセスメントに特化した研修プログラムが必要である。これまでに、試行と改良を繰り返した研修プログラムを完成させている。このプログラムについて、スキル評価指標を用いて前後比較をし効果検証を行った。 3.経年インタビュー調査では、1回目データ、つまり実践経験を積む前段階の分析を行い、その特徴を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.経年インタビュー調査を継続する。対応のあるデータが13名分得られているので、大学別の特徴、所属機関別の特徴を明らかにすることを目的に、分析を進める。また3回目のインタビューを実施して、個別の成長をさらに追う。この調査研究のため、経年調査の分析手法を習得する。 2.エキスパートインタビュー調査を実施する。2016年度中に10名以上のインタビューを実施する。認識の成長について促進要因と阻害要因を抽出することが目的だが、「認識」が対象なので、インタビュイーも明確に答えられないことが想定できる。分析については研究チームで方法も含めて試行錯誤しながら進めていく。 3.「自己規定」と「対象者観」という認識と、専門的価値との関係について、先行研究レビューを行い、理論的枠組みを設定する。 4.自己省察のためのガイドブックの材料が蓄積され始めるので、作成にとりかかる。
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Causes of Carryover |
計画には記載していた、エキスパートインタビュー調査が進まなかったこと、それに伴い、謝金・旅費・分析手法習得のための講習経費が支出されなかった。また、質的調査が終了しなかったため、評価指標開発のための質問項目の蓄積ができておらず、アンケート調査ができていないことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はエキスパートインタビューに注力する。10名以上のインタビューを計画しており、全国で調査を実施する予定なので、旅費も必要となる。これらの知見を基に研修会も計画しており、既に会場を抑えている。 経年インタビューは3回目になるので、相当なデータ量になる。これらを統合した質問紙を作成し、プリテストを実施する。
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Research Products
(4 results)