2015 Fiscal Year Research-status Report
緊急一時宿泊事業(シェルター事業)の実態と支援に関する総合的研究
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26380807
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
加美 嘉史 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (20340474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 加奈子 大谷大学, 文学部, 講師 (30726047)
小池 隆生 専修大学, 経済学部, 准教授 (40404826) [Withdrawn]
鈴木 忠義 長野大学, 社会福祉学部, 准教授 (60440195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 貧困化 / シェルター / 若者 / ホームレス / 一時生活支援事業 / 家庭崩壊 / 精神疾患・知的障害 / 生活保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は京都市のシェルター事業(一時生活支援事業)利用者のケース記録の中から40歳未満の若年利用者146名(男120名,女26名,2012年度利用者)の成育歴、家族環境、支援施設・生活保護等の利用経験など生活史に関するデータを抽出し、分析を行った。今年度は若年利用者のうち、特に知的障害者、児童養護施設等の入所経験者、女性、刑務所出所者の4類型を中心に事例分析を実施した。その結果、若年女性の場合は住居喪失に至る直接的要因が「家族からの暴力」「(内縁を含む)夫との離婚やDV」といった家族問題が多い傾向にあり、仕事の喪失をきっかけに住居喪失に至ることが多い男性との相違が見られた。また、男女とも家庭崩壊を経験した者は多いが、男性に比べて女性の方がより「精神疾患・生維新障害の症状あり」の比率が高かった(42.3%)。一方、知的障害者ケースでは職場内や家族間の人間関係・トラブル、金銭問題、家賃滞納などが住居喪失の直接的要因となったケースが多い傾向が見られた。 若年利用者のうちシェルター入所前に生活保護や支援施設を利用したことのある者は約3割確認された。「保護廃止」の理由としては「就労自立」や「失踪・家出」等が多く見られた。なお、「失踪・家出」には知的障害者のケースも多く、「保護廃止」の背景には居宅生活継続の支援が欠如していたといえる。 また、平成27年度からシェルター退所者へのインタビュー調査に着手した。今年度は精神・知的障害等を抱える若年層及び稼働年齢層など元シェルター利用者6名にインタビューを実施した。なお、インタビュー調査は平成28年度も継続予定であり、その詳細な分析も28年度に実施する計画である。 その他、京都市におけるホームレス対策の特質を明らかにするため、今年度は京都市の「浮浪者」「住所不定者」対策の歴史的考察を行い、その考察内容を論文等にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主な目的はシェルター(一時生活支援事業)利用者の生活実態を明らかにし、住居を形成した生活困窮者の形成過程と生活課題を明らかにすることにある。そのため本研究では特にシェルター利用者のケース記録分析とインタビュー調査を中心に研究を進めている。そのうち平成26年度から開始したシェルター利用者のケース記録分析については、その成育歴、家庭環境、就労状況、障害・疾病状況などのデータ抽出はほぼ終えることができ、今後は住居喪失に至る貧困化の過程及び生活課題に関する類型化等を進める予定である。 一方、平成27年度から開始を計画していたインタビュー調査については、今年度はシェルター退所者の約20名に対してインタビューを実施する予定であった。しかし、シェルター退所後に連絡や関係が途絶えた利用者が想定以上に多く、今年度中にインタビューの合意を得ることができたのは6名に止まった。そのため、平成28年度もインタビュー調査を継続して実施する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の主な研究課題は、1.前年度から開始したシェルター(一時生活支援事業)退所者へのインタビュー調査の実施、2.各自治体におけるシェルター(一時生活支援事業)の実施状況について聞き取りを行う「現地ヒアリング調査」の実施、3、ホームレス対策の歴史的展開とシェルター事業の生活困窮者自立支援法への統合に伴う課題整理、という3点である。 まず、平成27年度に予定人数に達しなかったシェルター退所者へのインタビュー調査については、平成28年度は関係機関等に幅広く協力要請を行うことでインタビュー対象者の確保を図る。28年度については約15名から20名のシェルター退所者に対してインタビューを実施する計画である。27年度におけるインタビュー調査を踏まえて、当事者の語りから貧困化の過程と支援課題を明らかにしていく。 また、各自治体のシェルター(一時生活支援事業)の実施状況について聞き取りを行う「現地ヒアリング調査」を平成28年度から開始する計画である。全国の主なシェルター(一時生活支援事業)を訪問して運営状況について聞き取りを行い、その課題を具体的に明らかにしていく。今年度は、一次生活支援事業を実施している主な自治体(札幌、仙台、東京、横浜、川崎、静岡、愛知、兵庫、岡山、福岡、沖縄等)の自治体において現地ヒアリング調査を行う計画である。 なお、ホームレス対策の歴史的展開とシェルター事業の生活困窮者自立支援法への統合に伴う課題整理では、特に1990年代以降のホームレス対策におけるシェルター事業の役割と機能について考察を行うと伴に、生活困窮者自立支援法の一時生活支援事業に統合されたことでシェルター事業にどのような課題が生じているのか、文献資料等から考察を行い、平成29年度における研究総括へとつなげていく計画である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究計画に基づき、シェルター(一時生活支援事業)退所者へのインタビュー調査を実施したが、当初の計画ではインタビュー対象者を約20名と想定していた。しかし、調査対象者の選定を行った結果、シェルターを退所後に連絡が途絶えたり、転居した者が想定以上に多く、平成27年度中にインタビューの合意を得ることができた者は6名に止まってしまった。そのため、当初予定していたインタビューにおける文字起こし(テープ起こし)費用、調査員のアルバイト費用などに未使用金が生じたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の未使用金については、平成28年度においてシェルター退所者へのインタビュー調査を継続実施し、使用する計画である。平成28年度については約15名から20名のシェルター退所者にインタビューを実施する計画である。なお、平成28年度はインタビュー対象者を確実に確保し、計画通りインタビューを実施するため、関係機関等への協力要請も行っていく予定である。
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Research Products
(6 results)