2014 Fiscal Year Research-status Report
文化的価値の伝達:個人の選好および文化化による影響
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26380843
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石井 敬子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (10344532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化 / 価値 / 選好 / 伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該の文化において歴史的に培われてきた意味体系や信念、価値、社会規範は、それらが内包された慣習の日常的な実践や文化的産物への接触を通じ、人々に対してそれらに応じた心の性質を招来する。そして個々人は、その意味体系や信念、価値、社会規範を再生産していく。本研究はそれらのプロセスが繰り返される結果として、文化的産物に内包されている価値がどのように維持・変容されるのかを検討する。本年度は、連続再生法を用いた文化的産物の変容に着目し、人から人へ文化的産物が再生されていく過程において、当該の文化において優勢な価値が意識されることなく付与されていく結果、最終的な産物は当該の文化において優勢な価値を帯びた性質を伴う可能性について調べた。具体的には、文化的価値に関してニュートラルな塗り絵を出発点として、それを人から人へ再生していったとき、最終的にどのような特徴をもった塗り絵になるのかを検討した。具体的には、参加者にそのニュートラルな塗り絵を短時間提示し、妨害課題後、その塗り絵を再生してもらった。そして別の参加者にはその参加者の塗り絵を提示し、同様の手続きで塗り絵を再生してもらった。このようなことを塗り絵の再生を3名の間で行い、最終的にどのような塗り絵に変容するかを調べた。現在のところ日本でのデータ収集に留まっているが、来年度以降、日本で確立された手続きでアメリカでもデータ収集を行い、計画に従った研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、人から人へ再生されていく段階でその塗り絵のパターンが変容し、しかもその変容のパターンにおける文化的価値による影響を探索することを目的としているが、予備調査を何度か行ったところ、当初こちらが想定していたよりもパターンが変容しないことがわかり、そのため使用するのに適切な塗り絵の刺激および手法(提示時間や妨害課題の内容や時間)を確立するのに時間を要した。そのためアメリカでのデータ収集にまで至らなかったが、2015年度中にそれを迅速に行うことにしており、またマレーシアおよびカナダでのデータ収集もそれと並行して行うことが可能であるため、当初想定していたものより若干遅れはあるものの、総じて順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度中にウィスコンシン大学においてアメリカでのデータ収集を行い、日本での結果と比較する。それと同時並行に、個人の元々の文化的背景と現在の文化的背景をどれぐらい重視しているかが(例えば、アジア系カナダ人であれば、前者がアジア文化、後者がカナダに代表される北米文化にあたる)、文化的産物の生成にどのような影響を与えるのか、またプライミングの手法を用い、どちらの文化の概念を活性化させるかによって塗り絵に対する好みが変わってくるかどうかといった当初の計画通りの研究を進める。
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Causes of Carryover |
当初想定していたよりも実験手順を確立するまでに時間がかかり、アメリカでのデータ収集ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は研究計画に沿った実験を遂行しながら、アメリカでのデータ収集を行う。これらは異なる大学および共同研究者と行っていくため、同時並行で進めることに問題はない。
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Research Products
(4 results)