2015 Fiscal Year Research-status Report
自伝的記憶の想起の偏りを通してみた自閉症スペクトラム児の社会性の障害に関する研究
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26380895
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
平野 幹雄 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 准教授 (20364432)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 社会性 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、自閉症スペクトラム児における社会性の困難に焦点を当てて研究を進めた。具体的には、社会的相互作用場面で見られる「自己の行為とその結果の因果関係の理解の困難」に焦点を当て、彼らの特性を明らかにすることを目的とした。 行為者(自己および他者)によって因果関係の理解に違いがあるのかを検証するためにすごろく課題を用いた。知的障害のある自閉症スペクトラム児(8名)と知的障害児(7名)に実施したところ、知的障害児は行為者が自己であっても他者であっても因果関係の理解に違いは見られなかった。一方で、自閉症スペクトラム児は自己が行為者となる場合の因果関係の理解に困難を示す傾向がみられた。これらより、知的機能の制限があっても、自己の行為とその結果の因果関係の理解が困難であるという自閉症スペクトラムの特性が確認された。 加えて、すごろく課題においては、因果関係が生じた場面に関する質問(結果理由質問)において、自由回答を求めたのちに複数の選択肢を与えて回答を求めた。筆者らが以前おこなった高機能自閉症児を対象とした調査(鈴木ら, 2014)では、前者よりも後者の成績の方が良好であったが、知的障害のある自閉症スペクトラム児の場合、後者の成績の方が低かった。口頭での回答が難しい場合に選択肢を与えて回答を促すことを意図した課題であったが、知的障害のある自閉症スペクトラム児の場合は、選択肢が複数提示されることで情報過多となってしまい、回答に迷いが生じて成績が低くなってしまう可能性が考えられた。 次年度は、自閉症スペクトラム児の社会性の問題について引き続き検討を行うと同時に、自伝的記憶の想起課題を実施し、上述の結果との関連性を含めてさらに検討を重ねていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度おこなうべき研究そのものは遂行できたが、昨年度の遅れを取り戻すところまでは至らなかったことが理由である。一方で、報告をおこなった内容以外のデータの収集も既におこなっていることから、その分析を早急に行うことで進捗状況を挽回したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、対象を増やしてデータの収集をおこなうと同時に、自閉症スペクトラム児を対象とした自伝的記憶の想起の偏りの有無、並びにそうしたことと社会性の問題との関係性の有無の分析に主眼をおく予定である。加えて、明らかにされた事実に関して対象児の気づきを促す支援方略を構築し、長期間のかかわりの中て各々の社会性がどのように発達的な変化を遂げるかについて分析し、有効性、妥当性について検証する。 前年度までの研究成果を含めて研究のとりまとめをおこない、得られた知見は国内外の学術雑 誌へ順次投稿する(なお、最終年を待たずにまとまった知見が得られ次第順に投稿することとする)。
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Causes of Carryover |
計画していた海外出張の日程が確保できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、計画通り海外出張を履行すると同時に、より円滑にビデオ分析等を行うためにタブレット等の物品、消耗品の購入を予定している。
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Research Products
(1 results)