2016 Fiscal Year Research-status Report
自伝的記憶の想起の偏りを通してみた自閉症スペクトラム児の社会性の障害に関する研究
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26380895
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
平野 幹雄 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 准教授 (20364432)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 社会性 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、自閉症スペクトラム児における自伝的記憶の想起の偏りについて焦点を当てて研究を進めた。具体的には次の通り検討をおこなった。知的障害のある自閉症スペクトラム児8名と知的障害児7名を対象とした(レヴン色彩マトリクスを実施した結果、二つの対象群の間には知的機能に有意な差は存在しなかった)。感情に関する単語及び時代区分に関するテーマ(小学校時代、中学校時代等)、合計14個を口頭で順に示して、各々に関して自分の経験した特定の出来事を想起するように指示した。想起された出来事は、それぞれの内容に基づいて特定の出来事を想起できていたか否か(以下、特定性と記す)、いつ、どこで、だれが、どうしたといった情報が含まれていたかどうか分析した。想起内容に他者が含まれていたか、感情の想起があったかどうかも同時に分析した。 その結果、想起された全ての情報の特定性、いつ、どこで、だれが、どうした、他者が含まれていたか、感情が含まれていたかについて、対象群間で有意な偏りは見られなかった。一方で、感情に関する単語と時代区分に関するテーマとに分けて分析したところ、特定性に関して、知的障害児は感情に関する単語に対する想起において特定の出来事を想起する傾向にあった。一方、知的障害のある自閉症スペクトラム児は時代区分に関するテーマに関して特定の出来事を想起する傾向にあり、それらの偏りは有意であった(p<0.05)。これらは、知的障害児と、知的障害を伴う自閉症スペクトラム児との間で自伝的記憶にアクセスしやすい手がかりが異なっている可能性を示唆するものと考えられた。なお、その他の項目については有意な偏りは見られなかった。 最後に、対象者数を増やすべく追加調査を年度末に実施済みであり、今後はその分析を急ぐとともに、既に報告した社会性の問題との関係性について検討を進めたいと思っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は上記のように研究を実施したものの、本来の研究計画に照らし合わせると1年遅れとなってしまっており、遅れた分を挽回するに至らなかった。1年の研究期間延長の中でしっかりと挽回できるようにしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
対象者数を増やすべく追加調査を年度末に実施済みであり、今後はその分析を急ぐとともに、既に報告した社会性の問題との関係性について検討を進めたいと思っている。その上で、支援方略の構築について議論し総合的な考察を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
諸般に事情により、国外の学会への参加がかなわなかったこと、また海外研究者と議論するために計上していた旅費を使うことが日程的に困難であったために、多くの旅費を残すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
できる限り海外の研究者と議論する機会を作ると同時に、論文執筆を急ぎそれにかかる経費(掲載費、校閲費他)において効率的に支出することを考えている。
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