2014 Fiscal Year Research-status Report
対人援助職者の精神的健康保持のための手法の開発―社会的共有行動に焦点を当てて―
Project/Area Number |
26380979
|
Research Institution | Kawasaki College of Allied Health Professions |
Principal Investigator |
森本 寛訓 川崎医療短期大学, 一般教養, 講師 (40351960)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧川 真也 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (10587281)
黒田 裕子 川崎医療短期大学, 看護科, 准教授 (80342294)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 対人援助職者 / ポジティブ・ネガティブ職業生活出来事 / 社会的共有行動 / 精神的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,対人援助職者が職業生活上で行う社会的共有行動に焦点を当てて,対人援助職者の精神的健康保持のための手法を開発することである。そのため,平成26年度は,対人援助職者のポジティブ職業生活出来事(以下PWLEとする)とネガティブ職業生活出来事(以下NWLEとする)に対する社会的共有行動を開示行動と応答行動に分けて具体化し,PWLE とNWLE に対する対人援助職者の社会的共有行動チェックリストを作成することを研究目的とした。 平成26年度の研究目的を達成するために,平成26年8月から9月に,対人援助職者(看護師,介護福祉士,保育士)を対象とした質問紙法調査を実施した。調査では,森本他(2011)が作成したPWLEまたはNWLE項目の中から,開示,応答したことのある最も印象的な項目を一つ選択させた。 調査結果において,まず,今回の調査で最も高頻度で開示,応答されていたPWLEとNWLEに着目し,その内容を確認した。その結果,特にPWLE「職場スタッフ間で協力しあったこと。」と,NWLE「仕事に関してミスを起こしたこと。」は,開示,応答行動の両者に共通して最も高頻度で取り上げられた出来事であることがわかった。したがって,対人援助職者はふだんから職場スタッフ間で協力しあったことを職場で共有することでポジティブ感情を高め,また,仕事に関してミスを起こしたことを職場で共有することでネガティブ感情を軽減して,自身のメンタルヘルスを保持することが推測される。なお,以上は岡山心理学会第62回大会で報告された。 今回の調査ではPWLEとNWLEが,「誰に」「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」開示,応答されたかについても回答を得ており,これらの情報も踏まえてPWLE とNWLE に対する対人援助職者の社会的共有行動チェックリスト項目(原案)が作成されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究目的は,PWLE とNWLE に対する対人援助職者の社会的共有行動チェックリストを作成することであった。以上の目的のための調査を平成26年8月から9月に実施した。そして,調査結果をもとにチェックリスト項目の原案が作成された。この原案は確定版ではなく,今後に精錬が必要であるが,研究全体の計画および平成27年度の研究計画に支障をきたすものではない。したがって,現在までの達成度は,おおむね順調に進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究目的は,これまでの研究で作成されたPWLE とNWLE に対する対人援助職者の社会的共有行動チェックリストを用いて,対人援助職者の精神的健康保持に貢献する社会的共有行動(開示,応答行動)を明らかにすることである。したがって,平成27年度は,以上のチェックリストを含む質問紙を用いた調査を計画している。 この調査では,平成26年度の調査でも取り上げた対人援助職者(看護師,介護福祉士,保育士)に加え,異なる職種の対人援助職者も対象者とする予定である。さらに本研究で取り上げる社会的共有行動は,対人援助の現場で毎日体験しうるPWLEとNWLEを対象に行われるため,対人援助職者の感情状態へ日常的に作用し,結果として彼らの精神的健康に影響を及ぼすと予測される。この予測を検証するためにWebを用いた経時的な調査(縦断的調査)を計画している。 得られたデータはマルチレベル分析等の多変量解析を行い,その成果は各種の学会で報告する予定である。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は半構造化面接による調査も予定していた。しかし,調査の実施にあたり,調査先との調整等をふまえ再検討した結果,質問紙法調査の方がより効率的に行えると判断した。したがって,当初予定していた半構造化面接調査は行わなかったために,これにかかる「人件費・謝金」「通信費」が平成27年度に繰り越された。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,Web調査を実施するために「人件費・謝金」「その他」で計上した研究費と,平成26年度から繰り越した研究費を合算して使用する予定である。また,成果発表を各種学会で計画しており,係る費用には「国内旅費」として計上した研究費を充てる予定である。
|
Research Products
(1 results)