2015 Fiscal Year Research-status Report
対人援助職者の精神的健康保持のための手法の開発―社会的共有行動に焦点を当てて―
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26380979
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Research Institution | Kawasaki College of Allied Health Professions |
Principal Investigator |
森本 寛訓 川崎医療短期大学, 一般教養, 講師 (40351960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧川 真也 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (10587281)
黒田 裕子 川崎医療短期大学, 看護科, 准教授 (80342294)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 対人援助職者 / ポジティブ・ネガティブ職業生活出来事 / 社会的共有行動(開示・応答行動) / 精神的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は対人援助職者が職業生活上で行う社会的共有行動に焦点を当てて,彼らの精神的健康保持のための手法を開発することである。そのため平成27年度は,平成26年度に作成した対人援助職者のポジティブ職業生活出来事(PWLE)とネガティブ職業生活出来事(NWLE)に対する社会的共有行動のチェックリストによって,対人援助職者の精神的健康保持に貢献する社会的共有行動の内容を明らかにすることを研究目的とした。なお,本研究では社会的共有行動をPWLE,NWLEに対する開示・応答行動として捉える。したがって以上のチェックリストは,各々の行動を表す項目で構成された。例えば「PWLEを体験して得られたことを,職場に広めるために,職場スタッフに伝えた。」や「(PWLE開示行動に対し)私を肯定しようとして,話を聞いていた。」などの項目が含まれた。 今回の研究目的を達成するために,平成27年11月から12月にかけて看護師等の対人援助職者を対象に調査を行った。本研究で焦点を当てる社会的共有行動は,対人援助の現場で日常的に体験されるPWLEとNWLEについて行われるため,対人援助職者の感情状態へ経時的に作用し,精神的健康に影響を及ぼすと考えられた。よって今回は1人の調査対象者に対して週に1度の回答を4回連続で行うパネル調査を実施した。なお,この調査はWebを介して行った。さらに本調査では精神的健康の指標としてうつ(depression)を取り上げた。 調査結果より,チェックリストで取り上げた社会的共有行動においてPWLEに対する開示・応答行動の体験頻度が高いとポジティブ感情の体験頻度も高く,うつの程度は低いことがわかった。また,チェックリストのNWLEに対する開示・応答行動の体験頻度が高いとネガティブ感情の体験頻度は低く,うつの程度も低いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究目的は,PWLEとNWLEに対する社会的共有行動(開示・応答行動)のチェックリストによって,対人援助職者の精神的健康保持に貢献する社会的共有行動の内容を明らかにすることであった。そのため平成27年11月から12月にかけて調査を実施した。 当初,この調査は調査票を用いて行うよう計画していた。しかし研究過程で縦断的な調査が必要と判断され,また,その調査を効果的に行うためにはWebを用いた調査が妥当と考えられた。よって今回は調査方法を変更し,Web調査を実施した。なお,調査方法を検討することで研究の進捗が滞ることはなかった。 調査で得られたデータを分析した結果,チェックリストで取り上げた社会的共有行動と,ポジティブ・ネガティブ感情およびうつとの関連性が明らかになった。今後,詳細なデータ分析を行い,対人援助職者の精神的健康保持に貢献する社会的共有行動の内容を明確化する必要があるが,研究全体の計画および平成28年度の研究計画に支障をきたすものではない。したがって現在までの達成度は,おおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究目的は,平成27年度の成果をもとに社会的共有行動(開示・応答行動)の観点から対人援助職者の精神的健康保持のための手法を開発することである。具体的には,今回開発される手法をメンタルヘルスのためのコラボプラン(コラボは「協働」の英訳「collaboration」に由来する)とし,対人援助の職場における協働関係の中で,対人援助職者が実践しうる精神的健康保持のための社会的共有行動の手引書を開発する。最終的にメンタルヘルスのためのコラボプランはパンフレットにまとめ,本研究の成果物として現職の対人援助職者に還元できるよう努める。 また,平成27年度と同様に本研究の成果は各種の学会で報告して,その際の反応を以上のコラボプランの作成に活かす予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は調査票を用いた調査を予定していたが,実際にはWeb調査として行われ,その費用は「物品費」,「人件費・謝金」および「その他」として計上した研究費(直接経費)で支払うことができた。また「国内旅費」として計上した研究費は,研究代表者の学会出張費などの費用として支出した。さらに当初は計上していなかったが,本研究の成果発表を行う学術大会で提示する英文抄録の翻訳費用も平成27年度の予算から支出することができた。 以上より,平成27年度の予算は,ほぼ予定通りに活用されたといえる。ただし平成26年度から平成27年度への繰越金約15万円のうち,約8万円が次年度に繰り越されることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず,平成28年度は「メンタルヘルスのためのコラボプラン」をパンフレットにするために「印刷費」として計上した研究費を使用する予定である。さらに,成果発表を各種学会で計画しており,係る費用には「国内旅費」「外国旅費」として計上した研究費と,平成27年度から繰り越した研究費を合算して充てる予定である。
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