2014 Fiscal Year Research-status Report
戦前日本の初等教員養成における初等教員検定の果たした役割に関する府県比較研究
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26381011
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
丸山 剛史 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (40365549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 徹 東京福祉大学, 公私立大学の部局等, その他 (00633801)
疋田 祥人 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40425369)
笠間 賢二 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50161013)
遠藤 健治 美作大学, 生活科学部, 准教授 (50288031)
釜田 史 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 講師 (60548387)
山本 朗登 山口芸術短期大学, その他部局等, 講師 (60611704)
井上 惠美子 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (80259316)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 初等教員検定 / 初等教員養成 / 旧学制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前日本の初等教員検定制度の通史的事例の府県比較研究として、栃木、東京、大阪、山口、群馬、岡山の各府県を取り上げ、各府県の関係制度の形成から廃止までの過程を明らかにするとともに、初等教員養成システムにおける位置づけを検討し、教員検定が果たした役割について考察することを目的としている。本年度は、1872年から1900年までを対象とした。 特に栃木県及び群馬県に関して検討が進み、次のことが明らかになった。1)栃木では「栃木師範学校規則」、「栃木県学事条例」及び「公立小学校教員学業証明法」、「栃木県小学校教員免許状授与規則」、「小学校学力検定試験細則」、「小学校教員仮免許状授与規則」、「小学校教員検定等ニ関スル細則」を経て、1898年の細則改正においてこの時期の最終形態に至っていた。その他、高等女学校補修科及び裁縫専修科が師範学校小学校教員講習科と同等の扱いとされたこと、仮免許状授与規則のように先行研究で注視されていない規則も重要な役割を期待されて制定されていたことが明らかになった。2)群馬では「教育令施行実施規程」、「公立小学教員学力試験法」、「小学校教員免許状授与規則」、「小学校教員学力験定試験細則」、授業生規則、「小学校教員検定等ニ関スル細則」を経て、1894年の細則改正においてこの時期の最終形態に至っていた。この間には、受験者の質低下が報告され、正教員の検定実施回数が削減されるなど、厳格化の動きがあった。栃木は年2回及び臨時に試験検定が実施されたのに対し、群馬は年1回の実施とされた。合格判定基準は、栃木の各科目50点以上(平均60点以上)に対し、群馬は最低点数は40点以上であり、群馬は栃木より低く設定されていた。これは合格しやすくする措置であったと考えられる。このように、検定実施回数(とその変更)及び合格判定基準に府県による相違が現れやすいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とした栃木、東京、大阪、山口、群馬、岡山の各府県の資料残存状況確認はおおよそ終了し、栃木、東京、山口、群馬については予定通り資料収集及び分析を進めることができた。大阪に関しては、部分的にマイクロフィルム資料から関係資料を収集しなければならず、時間がかかっているが、主な規則の名称とその変更時期は確認できた。岡山に関しては、岡山県独自の動き(中学校等に附設された教員養成所、学校指定の教員検定実施校)に関して新資料の発見があったため、それを優先的に分析を進めてもらうことにした。 このように、おおむね計画通りに研究が実施されており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は、おおよそ順調に進んでいるので、次年度は1901年から1940年までを対象に検討を進める。 関係規則の確認が終了していない、大阪、岡山に関しては、研究代表者が支援し、最終年度までに計画を遂行できるようにする。
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Causes of Carryover |
差額が生じた理由は、主に次の二つの理由による。 1)想定よりも関係資料(特に古書)を入手できなかったためである。計画申請時には、それまでの古書流通状況を考慮し、予算を立てたが、計画年度に入ったところ、想定よりも関係資料が古書として流通しておらず、入手できた資料が少なかった。そのため、物品費に差額が生じた。 2)年2回の研究会開催を予定していたが、研究代表者及び研究分担者の日程調整が困難であり、年度末に進捗状況及び検討結果を報告する研究会を開催することが精一杯であった。そのため、旅費の使用が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度分の残金は、一部、年度末以降に古書市場に流通した関係資料の購入(約10万円)に充てるとともに、2016年度に繰り越し、教員検定内規(内規には合格判定基準が記されており、本研究において最も重要な資料)等の資料を収録した報告書の印刷・製本費(約30万円)に充てたい。報告書の印刷・製本は、当初予定していなかったことであるが、2014年度の研究を進めるなかで、少なくない教員検定内規を見つけ出すことができた。資料の散逸を防ぐとともに、今後の研究進展のためにも、資料集として整理しておく必要がある。この点については、研究代表者及び分担者の間でその重要性が確認されたため、資料を収録した報告書を作成することとした。
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Research Products
(1 results)