2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後の大学改革モデルの選択・受容過程の研究―琉球大学における家政学教育を焦点に―
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26381041
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
石渡 尊子 桜美林大学, 心理・教育学系, 准教授 (40439055)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 普及事業 / エクステンション / 生活改善 / ミシガン州立大学派遣顧問団 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の資料調査活動は、昨年度に行った沖縄県公文書館を中心とする沖縄調査に加え、ミシガン州立大学のアーカイブズとハワイ大学マノア校のアーカイブズにおいて行った。調査の成果として以下をあげることができる。 (1)ランド・グラント大学理念に基づき開学した琉球大学は、そこで行う研究と教育の成果を琉球の人々に「普及」することーつまり地域貢献を主におき事業を展開した。その普及事業の具体的内容を資料や当時の関係者の記録から明らかにした。(2)その間、普及事業は琉球政府側も展開していたが、米国関係者から琉球大学に移管する見解が出され、その後、すみ分けについて当時の琉球において大きな議論となっていく。結局、行政主体となり琉球大学の普及事業は消滅していくが、その過程と議論の内容が米国関係資料、立法院(琉球各地の代表者からなる議会)記録等を中心に明らかになった。(3)琉球大学創設および創設当初に、どのような大学理念がどのような理解で琉球大学に持ち込まれたのかを明らかにするために、米国関係者(ミシガン州立大学およびハワイ大学教授陣)の履歴、学問的背景を両大学のアーカイブズにて調査を行った。引き続きすべての関係者の調査を続ける。 これらの成果の一部を日本教育学会大会ラウンドテーブル及び日本家政学会家政学原論部会夏期セミナーで報告した。また論文としてまとめ、日本家政学会家政原論部会の『家政学原論研究』に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連携協力者と調査観点は異なるものの、膨大な一次資料を1点ずつ精査していく過程でお互いの調査観点の資料も探していくことができた。また適宜資料の検討会を実施することもできた。国内に存在する普及事業に関する米国関連資料について、内容を精査する課題は残っているものの必要な資料、該当箇所等については概ね複写を行うことができた。加えて、昨年度見送らざるを得なかったミシガン州立大学アーカイブズでの資料調査を実施できたことは実りが大きかった。と同時に、同アーカイブズ所蔵資料で要精査すべき資料群も新たに発見できた。 資料調査だけでなく、それらの整理の一貫として、日本教育学会2015年度大会において「米国統治下の琉球における教育改革モデルの選択・理解・受容(その2)」のラウンドテーブルテーマの下、「普及事業(エクステンション)から見る琉球大学」として報告した。また日本家政学会家政学原論部会2015年夏期セミナーにおいて「米国統治下の琉球大学における普及事業-ランド・グラント大学モデルからの変容に着目して-」として口頭発表を行った。また、同部会紀要『家政学原論研究』に論文「琉球大学の創設期における普及事業-家政学のあり方を考察するために-』を投稿し、査読の結果、次年度掲載されることが決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度においては、これまで同様、国内調査、米国調査および研究発表(口頭報告および論文執筆)を予定している。国内調査では、27年度は日程調整がうまくいかなかった関係者へのインタビュー調査を実施する。特に普及事業について新制大学発足直後に積極的に展開した本土の大学も視野にいれ琉球大学のあり方を検討する。 米国調査では、27年度に実施したミシガン州立大学アーカイブズの調査を継続する。琉球大学の創設期の大学のあり方、教育内容に影響を与えた当時のミシガン州立大学学長(ジョン・ハンナ)に関する資料群(27年度に発見を精査する。 研究成果は、日本家政学会原論部会2016年夏期セミナー時の口頭発表報告、博士学位請求論文内執筆等を通じて行う予定である。
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Causes of Carryover |
申請書に計上していたマイクロフィルムリーダーの購入を初年次に見送ったことで次年度使用額が生じる主な要因である。初年次に国内、国外資料調査が当初の計画よりも必要であること、平成27年年度の調査において新たな一次資料群を発見することができたり、精査には予定外の相当な時間を要することがわかりそれらの調査費用に当てたかったが、自らの校務の都合上日程確保ができなかったことも要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
統治下沖縄の普及事業の実態をさらに明らかにするためにも、沖縄本島以外の調査も必要であることが初年次に明らかになっているものの、その調査が未実施であること、国外についても、ミシガン州立大学アーカイブズ調査の継続並びにカリフォルニア州(スタンフォードおよびバークレー)のGHQ担当官関連文書の調査も行う必要があるため、これらの調査を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)