2015 Fiscal Year Research-status Report
外国人児童生徒在籍校におけるスクールリーダーの役割と経営行動の解明
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26381074
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
臼井 智美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30389811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 博志 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 准教授 (80323228)
鞍馬 裕美 明治学院大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50461794)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 学校経営 / スクールリーダー / 外国人児童生徒 / 言語教育政策 / 学力政策 / 移民教育政策 / オーストラリア / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の外国人児童生徒在籍校におけるスクールリーダーの役割と経営行動の解明である。そのために、平成27年度は、3つの調査を通じて、外国人児童生徒在籍校のスクールリーダーに求められる役割や経営力量について考察を行った。 文献調査では、日本と英・米・豪国の学校経営学研究や政策文書等について、専門職基準などのスクールリーダーの役割や経営力量に関する議論の中で、移民等の子どもの教育に関する言及がどのようになされているのかを比較検討した。その結果、英・米・豪国では合意された専門職基準があり、スクールリーダーの役割や経営力量を描いた上で下構的に一般教員の役割や力量が構想されており、移民等の子どもの教育に関しても、スクールリーダーと一般教員との間に求められる役割や力量の違いがあることがわかった。このことは、日本と比較したときに、日本には合意された専門職基準がないこと、外国人児童生徒教育に関する特別な役割や力量への関心がないこと、とは大きく異なる点である。 外国実態調査では、米国調査1と豪国調査を行い、両国で実施されているESL教育のプログラムや指導者養成の方法、有資格者がいる学校での実践例等に関する情報収集を行った。移民等の子どもを対象にするESL教育であるが、両国では指導者養成の方法やプログラムの実施形態にも大きな差があることが明らかになった。また、シンガポール調査も行ったが、同国の複言語主義に基づく言語教育政策に関する資料収集を行うとともに、現地校で授業参観を行った。 日本実態調査では、平成26 年度に引き続き、外国人児童生徒が在籍する公立小・中学校(8校)の校長と研究主任を対象にした聞き取り調査を行った。平成26年度調査分とあわせて計15校で調査を実施したが、スクールリーダーの経営行動として、1つの顕著な行動の存在が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査では、平成26年度に行った英・米・豪国およびシンガポールのそれぞれの国での移民等の子どもの教育に関する政策や学校経営に関する先行研究の把握を踏まえて、平成27年度は、各国の実態を横断的に比較検討できるような分析枠組みの構築を行った。これにより、制度や文化的な相違を超えて、各国の政策の特徴を把握することができた。また、各国と比較して日本の教育政策の特徴を抽出することもできた。政策の背景にある各国の考え方や価値観の相違が、移民等の子どもの教育に対する施策の違いを生んでいることがわかった。 外国実態調査では、米国調査1(平成26年度に実施予定だったもの)と豪国調査、シンガポール調査を行い、ESL教育などの第二言語教育の指導者の養成や資格に関する資料や、有資格者がいる学校の指導実態に関する情報の収集を行うことができた。制度概要は政策文書等で確認することができるが、政策担当者や学校現場の当事者への聞き取り調査を実施したことで、制度運用上の裁量の実態や学校間の相違を考察するための手がかりを得ることができた。なお、平成27年度に実施予定だった英国調査については、調査スケジュールの都合により、平成28年度の実施に変更した。 日本実態調査では、平成26年度に引き続き、外国人児童生徒が在籍する公立小・中学校の校長と研究主任に対する聞き取り調査を8校で実施することができた。平成26年度に調査した7校の調査結果のみでは、顕著な特徴を抽出することは困難だったが、平成27年度調査により8校分のデータが増えたことで、外国人児童生徒在籍校のスクールリーダーの経営行動の特徴として、1つの仮説を導くことができた。 共同研究者とは、5回の研究打ち合わせの他、メールや電話等を通じて、研究情報の共有や論文執筆等の作業を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査では、日本と英・米・豪国およびシンガポールのそれぞれの国での移民等の子どもの教育に関する政策や学校経営に関する先行研究の検討を引き続き行う。特に、各国間で学校経営実態やスクールリーダーの経営行動に相違をもたらす要因の抽出に焦点を当てる。 外国実態調査では、平成27年度より繰り越した英国調査を行う。また、米国調査2も行う。米国調査1がESL教育の実態把握を主目的としたのに対し、米国調査2では、移民等の子どもの多数居住地域での学校経営実態の把握を主目的とする。 日本実態調査では、平成26・27年度に実施した聞き取り調査のデータの分析を行い、外国人児童生徒在籍校の校長と研究主任の経営行動の共通点や相違点、特徴等の検討を行う。また、諸外国の事例との比較を行いながら、日本の外国人児童生徒在籍校のスクールリーダーに期待される役割や経営行動についての考察も行う。 本研究は本年度が最終年度となるため、研究成果のまとめに向けて研究打ち合わせを3回行い、本研究の到達点と今後の研究課題について議論を深める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次の2つである。1つは、平成27年度に実施予定だった英国調査を、調査を分担している連携研究者の調査スケジュールの都合により、平成28年度の実施に変更したためである。これにより、英国調査用に確保していた30万円分が未執行となった。もう1つは、3月に行った研究打ち合わせに際し、連携研究者の旅費を確保していたが、体調不良により連携研究者が参加できなかったためである。これにより、当該旅費分が未執行となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に使用しなかった383,646円については、平成28年度に繰り越した英国調査の費用として使用するとともに、平成28年度分の助成金と合わせて、研究打ち合わせ用の旅費や聞き取り調査データの文字起こしなどの謝金に使用する計画である。
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