2014 Fiscal Year Research-status Report
保育者のファーストステージを支える「成長感」を核とした養成と現職教育の連携
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26381102
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
内藤 知美 東京都市大学, 人間科学部, 教授 (10308330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田爪 宏二 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (20310865)
大野 和男 鎌倉女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40339487)
井戸 ゆかり 東京都市大学, 人間科学部, 教授 (60331500)
小泉 裕子 鎌倉女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80310465)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保育者養成 / 現職教育 / 移行期 / ファーストステージクライシス / 評価(アセスメント) / 振り返り |
Outline of Annual Research Achievements |
保育者の成長プロセスにおける養成課程の段階から現職者、特にファーストステージ(主に新任段階)への「移行」に着目し、円滑な移行を促す養成課程と現職教育の連携のあり方を研究することを目的とした。 26年度は、養成段階の「保育者になる」という意識から、新任保育者が「保育者である」という自覚に至るプロセスとそこに起こる質的変容に着目して検討をした。具体的には新任保育者に対して、着任後の実態、子ども・保護者対応、職場環境などについてインタビュー調査を実施し、「保育者である」という認識をもつことを阻害する要因あるいは促進する要因について検討した。その際、内実をより精緻に調査するために新任保育者の1年間の変容を4期に分けて捉えて分析することとした。 その結果、1年目2期までの保育者は長期的な見通しを持たないため不安を抱え、かつ「振り返り」の余裕はない。そのため社会人としての心情面の不安は同期からの「共感」によって、また保育技術の不足は先輩保育者の「手本」によって危機を乗り越える手段としている。この時期、保育者としての自身の評価(アセスメント)を求める欲求が強く、「他者評価への依存」が強みられる。3期に現れる「子ども・子どもの成長」への気づきが、「振り返り」や「自己評価軸」の形成につながると考えられる。また長期の見通しの欠落を補い、自己評価軸の形成のための「指導担当制」などの園内のシステムは有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究計画には、1)国内外の保育者の専門性、現職教育についての先行研究の収集、整理、検討、2)ファーストステージ保育者および養成段階の学生のアンケート、インタビュー調査の実施、3)中間報告としての日本保育学会等での発表の3点を挙げた。 1)については順調に進んでいる。2)については、精緻で確実な質問項目によってアンケート調査を実施するために、26年度はアンケート調査のためのプレインタビュー調査を重視し、その結果、例えば新任保育者の変容を4期に分けて分析することが有効であるなどの視点が得られた。調査項目立案のために準備に時間を要したため、アンケートについては、27年度に実施するなど若干の変更が生じているが、すでに調査項目の検討は終わっているため、おおむね順調に進展しているといえる。3)については、日本保育学会、OMEPなどで中間報告を行い、研究について助言、示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)「保育者になる」から「保育者である」という移行のプロセスとその質的変容を明らかにするために、養成段階の学生、ファーストステージの現職保育者にアンケート、インタビュー調査を行う。その際、平成26年度にプレインタビュー調査を行い、立案したアンケート質問項目をもとに実施する。 2)保育者が保育者としての自身を評価するために、「他者評価から自己評価軸の獲得」につながっているのか、保育評価(アセスメント)の先駆的研究を行う、NZなどの実践から学ぶとともに国内の園内研修に参加する。 3)上記の結果を日本保育学会等で中間報告し、平成28年度の研究のまとめへとつなげていく。
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Causes of Carryover |
26年度において、現職者のアンケート調査の実施を予定していたが、現職者へのアンケート調査の質問項目の立案にあたって、より精緻で有効な質問項目を立案するため、アンケート調査の実施の前に現職者へのプレインタビューを実施し、質問項目の精査を図り、そのための研究に時間を要したため。このプレインタビューを実施し立案したアンケートを用いて、27年度に調査を実施する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度に精査し立案した質問項目を用いて、養成段階の学生および現職者へのアンケート・インタビュー調査を実施する。そのため、この調査にかかわる物品費、人件費、謝金等を使用する。また保育評価(アセスメント)において先駆的研究を行っているNZの保育実践を調査するとともに、国内では幼稚園・保育所等の園内研修に参加し、評価の実態を調査する。26年度および27年度に得られた成果を中間報告として、日本保育学会、保育士養成協議会などの関連学会で発表をする。
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