2014 Fiscal Year Research-status Report
社会的困難の集中する地域において自立をめざす若者の支援に関する理論的・実証的研究
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26381118
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木戸口 正宏 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (90405093)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育学 / 自立支援 / 移行研究 / 格差・貧困 / 若者・青年研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実績は以下の通りである。 1)東京都内の普通科高校卒業者に対する経年的な聞き取りをベースに、単著の論文を執筆・発表した。論文では①「大人になること」を当事者がどのように経験し、またそれを見通しているのか、②そこにはどのような困難があり、また当事者は何に依拠してその困難を乗り越えようとしているのか、について論じるとともに、「成人期」の把握をめぐる国際的・国内的な理論動向の整理を試みた。その際、「大人への移行は個人化・個別化し、従来のように共通の像はもはや描けない」とする論を批判し、現在においても若者たちの多くが「離家・就業・家族形成」といった「移行の三つの側面」に関わって、自身の「成長」を評価・認識していることを明らかにするとともに、従来の青年期に比して、「就業」が必ずしも移行の全体構造を引っ張る軸とはなっておらず、移行の形態が複雑化していることを指摘した。 2)「若者の教育とキャリア形成に関する調査」(YCSJ)に研究分担者として参加し、そこで得られた知見に基づき他の共同研究者とともに国際学会での報告を行った。報告のテーマは以下の通りである。①主として不安定な移行過程にある若者たちへの聞き取りをベースに、②彼らがどのような困難に直面しているのか、その背景には学歴・職業履歴・ジェンダー・家族関係・友人関係・地域性など、移行にかかわるどのような要因が存在しているのか、③彼ら自身はその困難をどのように捉え、意味づけ、それと向きあおうとしているのか。 3)このほかに、報告者が調査フィールドとしている、北海道釧路市における、社会的困難に直面する若者たちの現状とそこから得られた知見について、学会や地域の福祉・教育関係者が参加する学習会等で、報告を行った。 4)平成27年度には、上記の研究成果に基づき、新たな著作を刊行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画からの大きな逸脱はなく、おおむね順調に推移しているものと判断できる。ただし若干の遅延があり、次年度使用額が発生した。そのため今後は研究状況の推移を踏まえ、随時計画の調整を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、前年度の研究成果に基づき、新たな著作を刊行する予定である。 特に「大人になること」「社会的自立」という観点から、これまでの理論動向を整理し、解明の求められる課題を理論的・実証的に明らかにすることを試みたい。 また生活困窮者自立支援法の施行に基づき、本年度より、新たな枠組で実施される釧路市の学習支援プログラム等についても、引き続きその動向を追跡し、その到達および課題を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
研究計画の若干の遅延のため、人件費など当初計画より執行が遅れたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
聞き取り調査などの謝礼やテキスト化のための予算として重点的に使用したい。 またあわせて旅費等に充てることで、調査活動の充実を図りたい。
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