2015 Fiscal Year Research-status Report
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26381121
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上田 孝典 筑波大学, 人間系, 准教授 (30453004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 終身教育促進条例 / 社区教育 / 学習型都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、上海市の生涯教育の取組みを調査し、上海市教育委員会の関係者への聞き取りや社区学校、居民委員会学習センターへの視察を行った。成果として、上海では学習型都市建設に向けて地域における教育機会の拡充を統一的に進めながら、各区ごとに特色を競い合う形で様々な教育サービスを提供していることが分かった。具体的には、高齢者大学や青少年活動センターの機能を併設させた拠点施設の建設や事業委託によりNPOなど民間活力を利用した教育サービスの提供、さらにボランティア組織の活用やインターネットによるオンライン学習、学習サークル(学習団体)の展開など、多彩なアクターによる多様な活動の拡がりをみることができた。同時に、単位銀行制度の試行によって、学歴型教育と非学歴型教育、学校教育と社区教育、高齢者教育などへの接続、連携についても実験が進んでいる。また2015年に「終身教育促進条例」を制定した寧波市での調査も行った。条例制定のプロセスは、2012年の市議会において制定が決定され、先進地調査、草案の作成とパブリックコメント、起草など3年の期間を費やした経緯が明らかになった。条例制定後は、法的根拠が示されたことで、財政基盤や施策の推進の原動力になったという。また社区学院、社区学校、学習センターの三層構造が確立しており、相互の連携、協力の体制も構築されている。具体的には、社区学院においては、社区学校の教員研修、教材編集などを行い、社区学校が地域の教育拠点となり、学習センターなどへも出前講座、講師派遣などを行っている。上海と比べ、インターネットや民間活力の活用などはみられないが、社会的弱者(貧困者、農民工、外国人)などへの教育支援を行っており、高齢者を中心に識字教育などにも取り組んでいる実態が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点で、上海市と寧波市での調査にとどまり、当初予定していた福建省や北京市への調査が実施できていない。また日中韓の生涯学習推進事業の比較についても、実地調査ができていない。その理由として、調査できた地方以外の関係者との連絡がつかず、また3カ国の生涯学習推進事業の開催時期が限定されているため、都合により参加することができなかったことが挙げられる。実地調査はできていないが、文献やインターネットを通じた情報収集は行っており、調査可能性を探りながら、継続的に情報収集に努めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は最終年度として、日本、韓国を含めて実地調査を継続する。また日中韓3か国の研究者によるシンポジウムを企画し、生涯学習二関する法制度の在り方と振興方策の比較検討を行い、論文集を作成する。また、その成果を報告書にまとめる。 なお、当初予定していた調査が実施できなかった場合は、文献やインターネットによる情報収集及び現地研究者への聞き取りなどによって補う。
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Causes of Carryover |
現地調査が予定よりも実施できなかったことや、旅費の見積もりが想定よりも下回ったため、大幅に差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで不足していた現地調査を計画的に行う旅費のほか、研究成果を学会で報告するための参加費用、またシンポジウムの開催にあたり、中国や韓国から研究者を招聘する経費、また資料の整理とうに係る人件費、報告書の作成に係る経費など、最終年度に研究のまとめを行うために使用する計画である。
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Research Products
(2 results)